2021 Fiscal Year Research-status Report
GUNプラスチドシグナル伝達の分子機構と植物陸上化にともなう進化の研究
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17K07444
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
望月 伸悦 京都大学, 理学研究科, 助教 (60280939)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 色素体機能 / レトログレードシグナル / 光合成 / PPRタンパク / 天然変性領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスチドシグナルは、プラスチドの分化・発達状態を細胞核に伝え、主にプラスチド機能に関わる遺伝子の発現を調節し、植物細胞の恒常性を維持している。本研究は、GUN遺伝子群を中心に、プラスチドシグナル伝達調節機構解明をめざしている。 (A)in vivoにおけるGUN1相互作用因子の探索: GUN1-tag発現株におけるGUN1タンパクを用い、免疫沈降法でGUN1特異的に相互作用する因子が見られた。 (B)プラスチド非依存的に光形態形成を行う突然変異体およびgun1欠損株のサプレッサー変異の単離・解析: (B-1)突然変異体の原因遺伝子を同定し、ノックアウト株で同様の表現型を示すことを確認した。この原因遺伝子とプラスチドシグナルの関連は報告がなく、新規な経路の発見である。 (B-2)gun1サプレッサーについては、原因遺伝子3候補についてノックアウト株を取得し、gun1変異の抑圧が再現するか調べている。 (C)プラスチドシグナルとGUN1の進化について手がかりを得るため、シャジクモ類C. braunii(CbGUN1)とC. orbicularisのGUN1オーソログ(CoGUN1)導入植物を作製した。また、CbGUN1とAtGUN1のキメラ遺伝子を作製し、シロイヌナズナgun1変異体に導入した。その結果。GUN1機能の一部はこれらのオーソログで相補された。結果をまとめると、GUN1による核遺伝子の調節機構は比較的初期に獲得されたが、RNA編集や翻訳系の調節はその後、植物が陸上化して獲得されたと考えられる。上記解析の過程で、GUN1のN末端領域に存在する天然変性領域が機能に重要であることが示唆された。そこで、この領域に変異を導入して機能への影響を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画は、コロナウイルスの発生の影響で全体に遅延しているため、期間を延長して継続することにした。 (A)GUN1相互作用因子の検索:コンストラクトを改良して得られた GUN1-tagタンパク質高発現株を用い、GUN1タンパク発現に最適な条件で生育した植物からGUN1を抽出し、共免疫沈降するタンパクの検出を進めた。GUN1タンパク量が少ないため、免疫沈降効率 が低く解析に時間がかかった。 (B)GUN1ox株を親とするgun1様表現型を示す突然変異体2株について、候補遺伝子ノックアウト株を入手したが、種子集団がヘテロであり、セカンドサイト変異の影響があり解析が困難だった。バッククロス等に時間がかかった。gun1変異のサプレッサー候補遺伝子についても、遺伝学的解析は概ね予定通りに進んでいる。 (C)コレオケーテGUN1オーソログ(CoGUN1)を導入したシロイヌナズナgun1変異体におけるGUN1機能の一部回復が見られたが、導入したGUN1オーソログタンパクが当初検出できなかったため、その条件検討に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)共免疫沈降で検出された相互作用因子の同定を進める。また、ウイルルベクター系や無細胞タンパク翻訳系を用いてGUN1組換えタンパクの調製をすすめ、これら因子とのin vitroでの相互作用や生化学的解析を行う。 (B)葉緑体に局在するタンパク以外に、細胞核や細胞質で働くと考えられるクロマチンリモデリング因子や翻訳制御に関わる因子が同定されているので、その作用点やメカニズムを明らかにする。 (C)GUN1タンパクのN末端に存在する天然変性領域がタンパクの安定化と機能に重要であることが示唆されているため、この領域の改変や種間のドメイン交換などを行い解析を進める。
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Causes of Carryover |
最終年度からの計画の遅れに加え、コロナウイルス拡大の影響で実験時間が著しく短縮され、また他大学の研究協力者と予定していた実験の一部が行えなかったため。令和4年度は若干の制限緩和が見込まれるため、特に(A)相互作用因子の解析を中心に生化学的解析に予算を集中して進める計画である。
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