2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07461
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩瀬 哲 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40553764)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 転写因子ネットワーク / 分化可塑性 / カルス / 脱分化 / 分化全能性 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞の柔軟な分化可塑性と再生能力の高さは、組織培養を用いたクローン増殖等、農業的にも古くから利用されてきた。種々のストレス、特に傷害に応じて発生運命の転換が成し遂げられるが、どのような分子基盤がその背後にあるのか不明な点が多く、植物科学における重要な問いの一つとなっている。申請者はこれまでの研究から、 植物細胞の脱分化を促進する因子や、抑制する因子が存在することを明らかにしてきた。植物細胞の脱分化を分子レベルでより深く理解するためには、 キーファクターが直接制御する因子は何か、さらには、細胞脱分化を司る実行因子群を実際に特定し、それらの発現が時間的にどのように変化するかを包括的に理解する必要がある。 本研究では、脱分化促進転写因子を足がかりとし、特に傷害誘導後の遺伝子発現ネットワークを経時的トランスクリプトーム解析によって明らかにする。またChIP-seq解析を進め、脱分化促進転写因子がゲノム上のどの領域に結合するかを網羅的に捉える。傷害部位における脱分化促進転写因子の機能抑制変異体と野生株の遺伝子発現差異、ゲノム結合部位情報、さらに遺伝子発現誘導系で抽出した因子群から脱分化促進転写因子の直接/非直接下流候補因子を選抜することができた。さらに下流の重要因子に着目し、これらの因子とカルス形成、脱分化促進転写因子による発現制御様式を生化学的、分子遺伝学的なアプローチを用いて解析した。これらの研究から、植物の胚発生に必要な因子や、幹細胞の維持等に必要な重要因子の遺伝子が、傷害ストレスや、脱分化促進転写因子の発現誘導時に誘導され、傷害部位における組織再生を担っていることが明らかとなった。論文投稿むけた追加実験を鋭意進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予期していなかったデータから、脱分化促進転写因子の機能に関する新規な知見を得ることができ、新規な研究立案に繋がっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムへの結合データは、脱分化促進転写因子が関与するタンパク質複合体における機能を説明するための重要なデータとなるため先の研究に回し、トランスクリプトーム解析をメインとした論文を近く投稿予定である。論文提出にむけた追加実験を行っている。
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Causes of Carryover |
ChIP-seq法による実験を繰り返し、ロバストなデータセットを取得するために必要になったため。
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Research Products
(5 results)