2017 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the response to cold stress in cellular functions and morphology of blood cells and hematopoiesis in amphibia
Project/Area Number |
17K07476
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 尚志 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80350388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 圭 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (80779108)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 造血 / 両生類 / アフリカツメガエル / ネッタイツメガエル / 環境ストレス / 血球 / 造血因子 / 環境温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
無尾両生類ツメガエルを低温に暴露すると末梢の赤血球,栓球,白血球の数は急激に減少し,汎血球減少症を呈する特異な現象がある。本研究は特に赤血球,栓球の減少を観察し,解析するためのモデル系を構築してその分子機序の特定を目指している。第1年度では,末梢栓球を主たる対象とし,低温曝露下の血球挙動の解析のために①血球トラッキング,②in vivo血流イメージング,③血球-血管内皮細胞接着,④血流量変化等計測を計画した。長期的に①,②は,栓球特異的遺伝子発現をGFP蛍光で標識する遺伝子改変(Tg)動物が不可欠と結論した。そこでネッタイツメガエルNBRP拠点の広島大両生類研究センターより修得した実験技術を稼働させる諸準備を進めた。④では全身の低温化に伴う有意な全循環血液量変動は検出されなかったが,心拍数の顕著な低下を観測した。③では電子顕微鏡観察で低温曝露後に栓球の血管壁接着を認め,血栓形成消費による末梢栓球数減少が強く示唆された。低温刺激依存性に変動する分子群をプロテオミクスないし全RNAシークエンシングで解析するためは解析対象細胞の決定が必要にある。そこで血球と血管内皮細胞の接着を評価するin vitro実験系を構築した。コラーゲンコートガラスに接着させたツメガエル内皮細胞株XLgoo(伊藤ら,北里大学)と,末梢血液由来の蛍光標識栓球および白血球の共培養系を構築した。この系で22℃,5℃とも赤血球だけでは内皮細胞へ接着しないが、栓球及び白血球の一部が接着し,低温下で有意に接着数が増加した。,また低温下でCaイオン、あるいはアンチトロンビン非依存的な細胞接着の誘導が示唆された。そこでLC-MS/MSによるプロテオミクス法(Nagasawa et al., 2013)により,常温あるいは低温暴露後の栓球およびXLgoo細胞のプロテオーム変動を取得しパスウエイ/GO解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた項目への取り組みはほぼ達成した。ただし,栓球や白血球といった小数の血球に局在変化を追跡して,包括的に本現象を全身性(systemic)の環境温度応答として捉えるためには,遺伝子改変動物の作出が必須であると結論した(別項:今後の研究の推進方策を参照)。 本研究では様々な実験手法の確立が必須になる。予定していた取組み以外の副産物として,栓球や白血球などの希少細胞集団の機械計数法(いわゆるヒト臨床で常用される自動血算器)の確立が実現した。心採血したツメガエル全血をアクリジンオレンジで染色し,フローサイトメトリーによって血球鑑別・分類が可能になった(論文投稿中)。この方法は,哺乳類以外の有核赤血球,有核栓球をもつ全ての脊椎動物に基本的に適用可能と考えられる。こうした取り組みは将来の比較血液学的な学術展開に貢献する。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で浮上している課題と将来展開について記する。 【遺伝子改変動物の作出】実施予定項目のうち,末梢循環中に存在数が圧倒的に小数である栓球と白血球の局在変化の検出に関しては,単純なex vivo蛍光標識栓球/白血球の再輸血法では不確定要素がある。このため,トランスジェニックモデルの作出を平行させることにした。栓球系特異的蛍光標識個体は造血発生で栓球の起源を特定する有効手段となり,本研究の展開に寄与すると期待できる。 【オミクスの課題】栓球およびXLgoo細胞のプロテオオミクスを実施したが,アフリカツメガエルの全ゲノムデータベースは公開されたばかりでパスウエイ解析に必要となる分子機能の登録は殆どない。このため福井彰雅中央大学教授の支援により作成したアルゴリズムを適用してアフリカツメガエル分子をヒトやマウスのオルソログ分子に強引に読み替え,哺乳類のパスウエイ解析を利用している。全ゲノム情報をもつモデル動物でも,多分子連関による生理応答を追跡する共通の課題である。 【造血能全体の解析】末梢血球数変動に伴い,造血能の変動が想定され,造血幹細胞から末梢血球に至る血球細胞の分化・増殖の解析が必要となる。本研究の完成に向けて,未解明となっている両生類の造血幹細胞/組織幹細胞の純化,分離,性状解析や,造血関連分子の挙動を詳らかにするために適切な遺伝子の網羅的発現解析の実施を予定している。 【ネッタイツメガエル】本年度は過去の研究知見をもつアフリカツメガエルを対象に進めているが,特定された機序分子の機能のin vivo検証のために,遺伝子改変個体の作出を要すると考えている。本研究の後半で活用すべく,2倍体ネッタイツメガエルの低温暴露条件の模索を同時に進めている。アフリカツメガエルよりもはるかに低温忍容性が低く,現時点ではおそらく10℃前後が低温限界と考えられる。
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