2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional significance of two parallel olfactory pathways
Project/Area Number |
17K07479
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | キノコ体 / 並行処理 / 触角葉 / 投射ニューロン / 糸球体 / プルーム / 嗅覚情報処理 / ワモンゴキブリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多くの動物の嗅覚情報処理経路に共通にみられる並行経路についての具体的な機能や進化的起源についての示唆を得るため、進化的に古い昆虫(ワモンゴキブリ)を用いた形態・生理学的研究を行うものである。 研究開始2年目となるH30年度は当初計画通り、嗅覚情報を処理する単一糸球体投射ニューロン(介在ニューロン)の細胞内記録を行った。記録中には触角に定常的に与えられる気流の速度や加速度に対し、投射ニューロンの自発発火がどのように変化するのかについて調べた。記録後のニューロンには通電による細胞内染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてその形態を詳細に観察した。 その結果、一般臭を処理する投射ニューロンのほとんどが匂い刺激を行わない状態において、1-10 Hz程度の自発発火を示すことがわかった。単一糸球体に樹状突起を持つ投射ニューロンの約半数は気流に対する発火頻度の変化が見られないか、もしくは変化の不明瞭なタイプであり、残り半数が気流に対して明確な発火頻度変化がおこるタイプであった。発火頻度の変化がおこるタイプには流速を徐々に増加することでその自発発火が徐々に増大するものと自発発火が減弱するものが存在した。ただし、記録できたニューロンは全体の3割程度に留まっており、気流情報処理における2つの並行処理経路依存的な違いがあるのかどうかについてはさらなる検討が必要である。 以上の結果は投射ニューロンが匂い情報を処理していない間にも周囲の環境、すなわち、匂いを運ぶ気流についての情報を処理していることを明確に示すものである。本結果の一部については国内学会での発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに実験を遂行した。匂い情報を処理する単一糸球体投射ニューロンの細胞内記録に成功し、このニューロンの一部が気流速度や加速度によって明瞭な応答変化を示すこと、これらのニューロンが支配する糸球体を同定することができた。この知見は本研究テーマの核となる知見である。研究成果の一部についてはすでに国内学会で発表している。すでに当初の到達目標は達成しているが、論文化までにはサンプルサイズをもう少し増やす必要があることから、達成率は8割と自己評価したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿って実験を進める。まず、気流変化によってその応答が変化する投射ニューロンのサンプルサイズを増やすとともに触角の自発運動を妨げないプレパレーションを作成し、触角の位置や自発的な運動によって自発発火がどう変化するのかについても調べる。自然な触角運動が誘発されない場合には薬理学的手法を用いて触角運動を強制的に発現させる。
|
Causes of Carryover |
研究補助員への謝金がわずかに余ったためであり、翌年度に同研究補助員の謝金として使用予定である。
|