2017 Fiscal Year Research-status Report
光害による魚類生殖システムへの影響:脳深部神経に発現する光受容体から
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17K07486
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北橋 隆史 新潟大学, 自然科学系, 特任助教 (30749859)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光受容体 / 光環境 / 生殖 / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市環境における夜間の光暴露は、人間や動物の様々な生理機能に悪影響を及ぼすと考えられる(光害)。光によるメラトニン分泌を介した動物生理への影響は広く調べられているところだが、哺乳類以外の多くの生物では脳など眼以外の組織にも光受容体が存在することが知られており、光が直接的に神経細胞などに働きかけて生理機能を調節している可能性が高い。本研究では、特に魚類の脳内に発現している脳深部光受容体(opsin)と季節繁殖との関連に注目して、動物生理における光害のメカニズム解明を目指す。 そのために、まず本年度は、集団によって季節繁殖に異なる臨界日長をもつことが報告されている日本各地のメダカ4集団をNBRP Medakaを通じて各集団数ペアずつ入手し、繁殖させて実験のために次世代を得た。 メダカゲノムデータベースからは多数の光受容体配列が見つかっているが、それらのcDNAをクローニングし、リアルタイムPCRで遺伝子発現の組織分布や概日リズムを調べた。その結果、多くの光受容体遺伝子は眼や脳、皮膚といった組織で共通して発現が見られたが、腸や心臓などの組織では発現している光受容体遺伝子は限られることが分かった。また、明暗条件での遺伝子発現変動を調べると、複数あるOpsin4遺伝子は眼と脳では全く異なる日周発現変動を示していた。また、恒明・恒暗条件での遺伝子発現も調べてみると、Opsin4x1遺伝子発現量は、眼では光条件にかかわらず概日リズムを維持した一方で、脳では恒明条件で高レベルで安定し恒暗条件で低レベルで安定することが分かった。これらの結果は、1つの光受容体が眼と脳とでは遺伝子発現調節が全く異なることを示しており、関わっている生理機能も当然異なると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
親メダカの入手が遅れたことと予想以上にメダカの生育速度が遅かったせいで、実際の研究に用いる世代が数は十分にいるものの、性成熟については大半が未成熟な状態にある。したがって、本年度に行う予定であった日長の影響の詳細な解析は次年度まで持ち越し、その代りに光受容体遺伝子発現の組織分布など基礎データの充実を図った。来年度以降の実験に支障が出ないよう、飼育水槽を増やし余裕のある個体数を確保する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは異なる日長条件における光受容体遺伝子発現の応答を確認する。同時に、生殖に関わる神経ホルモン等の遺伝子発現レベル等も調べて、生殖に関わる脳深部光受容体候補を選び出す。それを踏まえ、候補受容体の生殖システムのとの関連を組織学的に調べ、さらにノックアウト動物を作製して、生殖などへの作用を解析していきたい。
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Causes of Carryover |
行動解析のために考えていた機材が、デモ機を試してみると実際の実験に使用するには支障がありそうだったので、次年度の予算と合わせてより高額な機器の購入することにした。 また、予定よりも規模を大きくして飼育するための飼育設備を整えたり遅れた分の実験を行うのにも十分な資金を確保する必要があった。次年度に、行動解析のための赤外線照明パネル購入費、組織学的解析用試薬・キット購入費、飼育設備購入費等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)