2017 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロクロマチンタンパク質HP1のヒストンH3K9me非依存的機能の解明
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17K07496
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高畑 信也 北海道大学, 理学研究院, 助教 (50381588)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HP1 / H3K9me / Swi6 / FACT / Spt16 / heterochromatin / chromodomain / Histone |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題はヘテロクロマチン領域内はもちろんの事、新たにヘテロクロマチン領域以外で機能するヘテロクロマチンタンパク質HP1の機能解析を行う。一般的にHP1タンパク質は自身の持つクロモドメイン(CD)を介してメチル化されたH3K9(H3K9me)に結合してサイレンシング因子群をリクルートする事でヘテロクロマチン化を行うと考えられているが、生体内におけるHP1分布解析からはH3K9meの存在箇所と必ずしも一致しておらず、何らかの生体分子メカニズムに基づいてH3K9me非依存的にクロマチンを認識して、クロマチン制御に関わっていると想定される。申請者は特にヒストンH3K9me非依存的に転写終結点に結合するHP1について以下の3つの目的を掲げて研究を進めている。「1.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6と結合するサイレンシング因子の探索」、「2.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6が転写終結点に結合する分子基盤の解明」、「3.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6が転写終結点に結合する生物学的意義の解明」。初期段階で目標1をベースとして目標2と目標3へと研究を進める事でHP1/Swi6の未知機能解明に繋がるように計画を立てており、現時点で分裂酵母を用いた解析からヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6に結合する因子(Ssb:Swi6 binding factor) Ssb1, Ssb2の)二つを同定した。加えて1に該当する因子として既にFACT(Facilitate Chromatin Transcriptioin)を同定しておりFACTとHP1/Swi6の共役を1つのモデルケースと考え、新規因子Ssb1, Ssb2の解析に応用して計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は特にヒストンH3K9me非依存的に転写終結点に結合するHP1について上述した通り3つの目的を掲げて研究を進めているが、特に初年度では「1.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6と結合するサイレンシング因子の探索」をメインに解析を進めてきた。その結果、HP1結合因子としていまだ報告されていない新規因子Ssb1とSsb2を同定した。免疫沈降実験によってこの二つの因子がSwi6と結合することを確認した後に、Swi6依存的にヘテロクロマチン上に結合する事をChIPアッセイで確認した。その後、研究目的の「2.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6が転写終結点に結合する分子基盤の解明」を遂行していく上で副次的に得られたSwi6点変異体がサイレンシングエフェクタータンパク質の一つであるSpt16との相互作用を失うことが明らかになったことから、Ssb1とSsb2についても同様に、このSwi6変異体との結合を確認できる状態になっている。またこのSwi6変異体を細胞内で発現させることでヘテロクロマチンに依存した遺伝子サイレンシングが崩壊すること、H3K9meのレベルが低下すること、Swi6点変異体自身のヘテロクロマチン結合が低下していることを確認しており、ヘテロクロマチン依存的な遺伝子サイレンシングに必須のサイレンシングエフェクター分子がどのようにSwi6を認識するのかを理解する上で大きなヒントになると予想される。当初のH3K9me非依存的なSwi6の役割解析に加えて、今後は新たにH3K9me依存的に結合するサイレンシングエフェクター分子も含めたヘテロクロマチン形成に必要な因子群解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り「2.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6が転写終結点に結合する分子基盤の解明」に取り掛かっており、研究は順調に推移している。またこの研究過程で副次的に既知のSwi6結合因子であるSpt16との結合が切れるSwi6点変異体の単離に成功しており、このSwi6点変異体を細胞内で発現させることでヘテロクロマチンに依存した遺伝子サイレン寝具が崩壊すること、H3K9meのレベルが低下すること、Swi6点変異体自身のヘテロクロマチン結合が低下していることを確認している。今後はSsb1とSsb2が染色体上のどこに強く結合しているかを網羅的に解析するためにChIP-seqを行い。すでに我々が行なったSwi6のChIP-seq結果、特に転写終結点付近への濃縮度合いととどの程度の重複を示すか解析を行い、Ssb1やSsb2が特に強い濃縮を示した場合にはSsb1やSsb2の変異株を用いて、Swi6の転写終結点付近への濃縮の分子メカニズムを探る。その解析をもとに研究目的の「3.ヒストンH3K9me非依存的にHP1/Swi6が転写終結点に結合する生物学的意義の解明」に解析ステージを進めて、特に転写終結点付近で頻繁に観察されるanti-sense RNAの発現量解析を行い、anti-sense RNAの持つ生理学的な役割をメインに解析する。
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Causes of Carryover |
消耗品をセーブした事で、直接経費(その他)として計上した分に少額の残額が発生したが翌年度に持ち越した。
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