2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒトrDNAのDNA複製様式の解析によるゲノム不安定性原因メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K07497
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤松 由布子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50381661)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | リボソームRNA遺伝子 / ゲノム不安定性 / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトゲノム中に数百コピー存在するリボソームRNA(rRNA)遺伝子(rDNA)には、複数種類の「DNA複製阻害配列・領域」が存在する。また、ヒトのガン組織や細胞では実際にrDNAの不安定性が観察されており、DNA複製とゲノム不安定性の関係性は興味深い。本年度はAlternative lengthening of telomere経路を獲得してテロメラーゼ非依存的にテロメアを伸長する細胞であるALT細胞についてrDNAにおけるゲノム不安定性を検証する実験を行った。 Pierceらに確立されたパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用いたrDNAリピート長の検出方法(Gene Cluster Instability: GCI assay)では、1Mb以下の長さを持つrDNAリピートでは、不安定性が典型的なラダー状に検出される。この方法を用いて、ALT細胞株(U2OS, SaOS, SUSM1, VA13)とnon-ALT細胞株(HeLa, HCT116, HEL293, RPE1)のrDNAリピート長を解析し、rDNAの不安定性を比較した。その結果、ALT 細胞株ではバルクの細胞集団において、non-ALT細胞株には見られないrDNAの不安定性を示すラダーパターンが見られたが、1細胞に由来するクローン細胞間ではrDNAクラスター長はnon-ALT細胞と同程度に均一であり、優位な不安定性は観察されなかった。この結果は、ALT細胞株では進行中のrDNA不安定性は起こっていないことを示唆している。しかしバルクの細胞集団ではrDNAクラスター長のheterogeneityが見られたことから、細胞株が樹立し増殖する過程に置いてrDNAの不安定性が誘導された可能性が考えられる。 また、DNA複製阻害配列・領域のゲノム不安定性への影響を調べるために、rDNA内の配列をヒト細胞内でDNA複製可能なプラスミド上にクローニングし、増殖中の細胞内でプラスミドの安定性を解析するアッセイを構築した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ガン細胞などで見られるrDNAクラスターの不安定性を、ALT細胞株をモデルとしてDNA複製との関係を調べる予定であった。しかしALT細胞株では、バルク集団でrDNAクラスター長のheterogeneityが観察されるものの、進行中のゲノム不安定性はrDNAでは検出されなかった。したがって、rDNA不安定性とDNA複製の関係を明らかにするために、単純にALT細胞株で解析することは出来ない。そのため、アプローチの方法を変更する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
rDNA不安定性とDNA複製との関係を明らかにするために、rDNAに存在するDNA複製阻害配列・領域のDNA複製を解析する。このためにDNA二次元電気泳動法を用いてDNA複製中間体を検出し、複製様式を明らかにする。また、ヒト細胞中でDNA複製出来るプラスミド上にこの配列をクローニングして、増殖中の細胞内でのプラスミドの安定性を調べることによりゲノム不安定性への影響を解析する。
|
Causes of Carryover |
ALT細胞株をモデル細胞としてrDNAの解析を行う予定であったが、変更した。そのため、当初予定していたよりも使用額が少なくなった。また、予定していた学会に参加しなかったため、旅費を使用しなかった。 未使用額については、翌年度の実験のための消耗品(細胞培養、DNA解析、抗体等)や学会参加のための費用に使用する。
|