2017 Fiscal Year Research-status Report
線虫温度応答行動から解き明かす新規シナプス伝達制御基盤
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17K07499
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 俊詩 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (60608529)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シナプス伝達制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、線虫MASTキナーゼが温度受容ニューロンのシナプス小胞あるいはペプチド小胞の輸送に関与するかを検討するため、それぞれの小胞を蛍光タンパク質で標識するマーカーを作成し、その局在を検証した。シナプス小胞のマーカーには、VGLUT(Vesicular Glutamate Transporter)のホモログをコードするeat-4遺伝子とGFPの融合遺伝子を、ペプチド小胞のマーカーには、ida-1遺伝子とGFPの融合遺伝子を作成した。この解析から、MASTキナーゼは、シナプス、ペプチド小胞どちらの局在にも顕著な異常を示さなかった。したがって、MASTキナーゼは小胞輸送とは異なるプロセスの制御を介して、シナプス伝達を制御していることが明らかとなった。 MASTキナーゼは温度受容ニューロンで機能して温度応答行動を制御することが分かっている。さらに、これまでの解析から、MASTキナーゼは、温度受容ニューロンのシナプス放出を制御していることが示唆されている。温度受容ニューロンからのシナプス伝達の影響を定量化するためには、温度受容ニューロンが接続する介在ニューロンの活動を計測する必要がある。そこで、この介在ニューロンのカルシウム動態を、自由行動下の線虫から計測する系を確立した。今後、この系を用いて、MASTキナーゼのシナプス伝達制御に関する詳細な役割を明らかにしていく。 また、以前の研究から、MASTキナーゼと遺伝学的に相互作用を示す変異体が遺伝学的スクリーニングによって単離されていた。本年度の研究において、このMASTキナーゼと機能的に関連すると考えられた変異体の遺伝子同定を行い、原因遺伝子の同定に成功した。今後、この変異体の解析も含め、研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた小胞輸送の可能性を検証し、さらに新規遺伝子の同定にも成功したことから、本研究課題は概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、MASTキナーゼなどの因子が、シナプス伝達を直接制御している可能性を検討する。このために、本年度に開発した自由行動下の線虫からカルシウムイメージングする計測系をもちいて、これらの因子がシナプス伝達に果たす役割を明らかにする。具体的には、野生型やMASTキナーゼなどの変異体を自由に行動させ、温度変化を与えながら、温度受容ニューロンとシナプス接続をする介在ニューロンの活動を計測する。この解析から、MASTキナーゼなどの変異体が、介在ニューロンの活動に影響することが明らかとなった場合は、それらの異常が温度受容ニューロンにおける遺伝子発現で回復するかを検討する。また、温度受容ニューロンで機能することが知られている神経伝達物質の関与も検討する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究を実施するにあたって、研究計画を詳細に見直し、本年度に格段必要としない消耗品の購入を控えることとした。これによって生じた次年度使用額は、研究計画の遂行に必須な経費にあて、特に次年度で必要となる消耗品等に充当する予定である。
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