2018 Fiscal Year Research-status Report
動原体構築に必須な細胞周期に依存したセントロメアクロマチン形成機構の解明
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17K07501
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 哲也 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (70550078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セントロメア / 細胞周期 / クロマチン / エピジェネティックス / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニワトリDT40細胞を用いて、細胞周期に依存したセントロメアに特異的なヒストン修飾およびクロマチン構築因子の同定を行い、それらを通じてセントロメアクロマチンの構築と維持の分子メカニズムの解明を目指している。平成30年度において、以下3つの項目について研究を行った。 1) CDK1as細胞周期同調法を行い、これまでデータの得られていなかったヒストン修飾を認識する抗体を用いて、対象とする修飾が除かれない条件とクロマチンの可溶化の条件の検討を行なった後、ChIP-seq解析を行なった。これら解析により、細胞周期の進行に伴うセントロメアに特異的なヒストン修飾の局在プロファイルを得た。 2) 平成29年度までに確立したCDK1as細胞周期同調法を主に適用し、セントロメア特異的なヒストンであるCENP-Aの有無により、セントロメア領域のクロマチンの安定性が変化するかを調べることを目指し、実験手法の構築を行なった。具体的には、CENP-Aタンパク質を破壊する実験系 (AID法) を利用した遺伝子破壊株の樹立を行った。さらに、このCENP-Aタンパク質を破壊する系を用いて、細胞周期のG1期とSおよびG2期の細胞をCENP-Aタンパク質の存在下および非存在下で取得する系を構築した。 3) CENP-Aヒストンのクロマチンへの取り込みを解析する実験系(SNAPアッセイ)の構築を行なった。この系を用いて、(2)で同調を行なった細胞集団におけるCENP-Aのクロマチンへの取り込み効率を解析した。その結果、CDK1as細胞周期同調法を適用して得たG1期の細胞集団では、ほぼ全ての細胞で高いCENP-Aの取り込み現象が観察され、これまでの知見と一致する結果を得た。この結果から、CDK1as細胞周期同調法が本計画に有効な同調法であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間中に明らかにする点として「細胞周期に依存したセントロメア領域のヒストン修飾プロファイルの変化」の解明を挙げた。この研究目標に関連して、これまで、M期進行に関与するリン酸化酵素CDK1遺伝子を特有な変異を持つCDK1遺伝子(CDK1as)と置換する遺伝子改変法によりCDK1as細胞株を樹立し、この細胞株を用いて細胞周期を高度に同調可能な方法を構築した。タンパク質を破壊する実験系 (AID法) を構築し、各種セントロメアタンパク質の破壊株を樹立した。このタンパク質分解系を、上記の細胞周期同調法と組み合わせ、各細胞周期で迅速に対象タンパク質を破壊するシステムを構築した。これら破壊株を利用し、各種セントロメアタンパク質の間期細胞のセントロメアクロマチンの核内配置の構築における役割を調べ報告した(Nishimura et al., J.C.B., 2018)。本論文では、ニワトリDT40細胞をモデルに、セントロメアクロマチンの細胞核内における3次元相互作用を4C解析法により調べた。解析の結果、間期核内で複数の染色体のセントロメアがクラスターを形成し、さらにそのクラスターがヘテロクロマチンを含むゲノム領域とも相互作用していることを明らかにした。この相互作用の生物学的な意味は不明だが、ヘテロクロマチンとの相互作用により、セントロメア機能およびセントロメアの位置の安定性への関与が示唆された。本成果は、研究目標であるセントロメアのクロマチン構築と維持メカニズムの解明に向けた鍵となる発見である。以上の理由により、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に構築した細胞周期同調法およびタンパク質破壊系を適用し、セントロメア特異的なヒストンCENP-Aの有無により、各細胞周期におけるセントロメア領域のクロマチンの安定性が変化するかを調べる。以下3項目について研究を推進する。 1) CDK1as細胞周期同調法を行い、同時にCENP-Aタンパク質の破壊を行なった細胞集団を取得する。得られた細胞集団を用いてヒストン修飾抗体を用いたChIP-seq解析を行なう。ヒストン修飾抗体は、東京工業大学の木村宏教授から供与を受け、次世代シーケンサーによる解析は、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授の協力のもと行ない、情報解析は国立遺伝学研究所の池尾一穂准教授の協力を仰ぐ。これら解析により、CENP-Aの存在の有無による各種細胞周期におけるクロマチン状態の変化を明らかにする。 2) (1)で取得した細胞集団を用いて、ATAC-seq解析を行う。このATAC-seq解析により、クロマチンの凝縮度を塩基配列レベルで明らかにする。ATAC-seqの次世代シーケンサーによる解析および情報解析は、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授および池尾一穂准教授の協力を仰ぐ。これら解析により、細胞周期の進行に従って変化するセントロメア領域のクロマチンの凝縮度およびヌクレオソームの安定性がCENP-Aの存在の有無で変化するかを明らかにする。 3) これまで使用してきたCDK1as細胞周期同調法および阻害剤による同調法を用いた方法に加えて、エルトリエーターを利用した細胞周期の分画法を検討する。本手法は、遠心分離により細胞の大きさおよび比重の異なる細胞集団を分画する手法である。この手法により、薬剤を使用しない通常培養の細胞から特定の細胞周期集団の取得を行い、上記(1,2)の実験を同様に行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:計画していたタグ抗体によるChIP-seq解析及びChIP実験と高感度質量分析を組み合わせた解析を保留した。その結果、クロマチン免疫沈降法における生化学実験で使用するFLAGあるいはGFPタグを認識する抗体、免疫沈降ビーズおよび高感度質量分析サンプル調整に必要な各種生化学、分子生物学実験試薬の購入を縮小した。以上の理由により次年度使用額が生じた。
使用計画:平成30年度までに構築した細胞周期同調法と迅速なタンパク質破壊株を利用したクロマチン状態の各種解析実験を行う計画である。次年度使用額は、クロマチン免疫沈降法における生化学実験で使用する免疫沈降ビーズおよびATAC-seqサンプルの調整に必要な各種生化学、分子生物学実験試薬の購入に使用する計画である。
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Remarks |
大阪大学大学院生命機能研究科染色体生物学研究室ホームページ http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/fukagawa/publications_j.html
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Research Products
(13 results)