2018 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the evolutionary background by raring planktonic larvae of heteronemerteans that become extremely long
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17K07520
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柁原 宏 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30360895)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活史形質 / 進化 / 紐形動物 / 体サイズ / 浮遊幼生 / 海産無脊椎動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年7月に北海道厚岸湾の無人島・大黒島の潮間帯で異紐虫類のカスリヒモムシを採集した。成熟個体から卵・精子を採取した後、人工的に受精させ、クリプト藻を餌として与え、最長で3週間飼育することに成功した。2017年9月に神奈川県三崎で得られたイソヒモムシを実験室で飼育し続けていたところ、2018年4月に尾部の断片化が観察された。断片の培養を継続したところ、頭部の再生が確認された。自切は2日~10日に1度起こり、生じた個々の尾部断片からそれぞれ頭部が再生された。再生は24日~36日で完了した。紐形動物における前方再生能はこれまでリネウス科のモエデヒモムシのみでしか知られていなかった。今回の発見はサナダヒモムシ科では初記録となる。共同研究者らと2014年から2018年の間に神奈川県三崎臨海実験所周辺で採集したイソヒモムシ個体群40個体のうち11個体がオス個体、29個体が未成熟個体であり、メス個体は全く観察されなかった。文献記録上、イソヒモムシは120年前には三崎には生息していなかったことがほぼ確かであり、外来個体によるクローンによって個体群が維持されている可能性が示唆された。研究成果をまとめた論文原稿は2019年2月18日からZoological Science誌のEarly viewで公開されている。2018年6月沖縄、7月鹿児島で得られたサナダヒモムシ科の別種、サナダヒモムシでも断片化による無性生殖が観察されたので短報にまとめ、Tropical Natural History誌上で公表した(2019年4月)。サナダヒモムシにおいては、飼育開始1ヵ月後から自切が観察され始めた。本種においては一度の自切によって4~12個の断片が生じ、その数は体長に応じて増える傾向が観察された。例えば体長15 cmの個体からは4個の断片が、55 cmの個体からは8個の断片が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目的としていた「変態までの幼生の飼育」に成功していないため。ただし、サナダヒモムシ類における断片化による無性生殖の実態を初めて観察し、学術的な報告を行った点は評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的の1つは、異紐虫類の浮遊幼生を変態するまで飼育することである。2017年・2018年度には共に厚岸産のカスリヒモムシを用いて最長で3週間飼育することに成功したが、変態の兆候である成体原基の形成は見られなかった。2017年度には、原因の一つはエサであると思われたが、2018年度には最も好適と考えられた浮遊性リノモナス(クリプト植物門)を与えてみても3週間で死滅してしまった。2018年度は飼育水槽中に菌類が増殖し、これが幼生に害を与えていた可能性が考えられる。菌類は恐らく餌のリノモナスの培養液中に由来していると考えられるので、2019年度はリノモナス培養液の無菌化を検討して、幼生飼育を試みる。
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Causes of Carryover |
年度当初予定していた異紐虫類全体の分子系統解析は、サンプル数の不足から翌年度に繰り越さざるを得なくなったため。
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Research Products
(3 results)