2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K07524
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上原 浩一 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (20221799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元己 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00193524)
渡辺 洋一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (30763651)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アザミ属 / MIG-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
キク科アザミ属は5節(タカアザミ節、ナンブアザミ節(含25亜節)、フジアザミ節、モリアザミ節、ヤナギアザミ節)150種あまりが知られ、そのほとんどが日本で記載された固有種となっている (門田, 2016)。 多様な種分化が見られるアザミ属であるが、集団内、集団間の変異が大きく、記載に用いられた分類形質にも変異が認められるなど、形態的な特徴が不明瞭である。そこで葉緑体DNAの5領域の塩基配列の解析と、次世代型シークエンサーによるMIG-seq法を用いて、アザミ属の系統解析を行った。 系統樹解析の結果、日本に自生するアザミ属は、ナンブアザミ節から北海道固有種の大半が属するチシマアザミ亜節とエゾノサワアザミ亜節を除いた①ナンブアザミ節グループ、チシマアザミ亜節とエゾノサワアザミ亜節からなる②北海道グループ、③タカアザミ節、モリアザミ節、ヤナギアザミ節グループの3グループに分けられた。なお、グループ①にはフジアザミ節であるフジアザミ、チシマアザミ亜節のアサヒカワアザミ、そしてエゾノサワアザミ亜節のアポイアザミが含まれた。 2倍体全サンプルの主成分分析(SNP数987)では、ナンブアザミ節のノアザミが優占するグループ(ClusterⅠ)とその他のサンプルグループ(ClusterⅡ)に分かれた。さらにCluster Ⅱのサンプルで主成分分析(SNP数1107)を行った結果、チシマアザミ亜節とエゾノサワアザミ亜節が優占するグループ(ClusterⅢ)とその他のグループ(ClusterⅣ)に分かれた。 葉緑体DNAにおける塩基配列から得られた系統樹において、ナンブアザミ節がタカアザミ節、モリアザミ節、ヤナギアザミ節と離れた系統を示し、ナンブアザミ節とこれら3節を異なる節として扱うことは妥当だと考える。しかし、フジアザミ節の種はナンブアザミ節に含まれる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、国立科学博物館筑波研究施設から提供されたさく葉標本と植物採集で得られたアザミ属および近縁の72種、74個体について葉緑体DNAの5領域の塩基配列の解析と、次世代型シークエンサーによるMIG-seq法を用いて、アザミ属全体の系統解析を行ない、日本国内のアザミ属の系統関係を大まかに明らかにすることができた。 また、北海道固有種であるチシマアザミ亜節とエゾノサワアザミ亜節の種やノアザミのナンブアザミ節内における系統的な立ち位置が明らかになった。同時に、検出力の高い次世代型シークエンサーを用いた解析によっても亜節や種ごとの系統的な構造が解明されなかったことから、アザミ属は形態的変異の割に遺伝的変異が相当低いことが示唆された。そして、ヒレアザミ属やアレチアザミ属とアザミ属の系統関係や、フジアザミ節とナンブアザミ節の系統関係はこれまでの分類に背く結果であり、このことから今後の分類体系の見直しが必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの分類と、本研究で得られた分子系統解析の結果をもとにより分類群と分布地域を絞り込んだ解析を進めようと考えている.具体的には日本海側に分布するカガノアザミ亜節の2倍体種、および太平洋側に分布するアズマヤマアザミとその近縁の2倍体種を材料に用いる。これらを複数の集団から複数個体のDNAサンプルとさく葉標本、1個体当たり複数の花のサンプリングを行い、個体内、集団内の個体間、集団間、種間における形態形質の変異を解析する.同時に同じ個体のDNAサンプルを次世代型DNAシークエンサーを用いたmig-seq解析を行い詳細な系統データ取得、形態学的データと合わせてアザミ属の分類の妥当性の検討、分類学的再検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
物品費として使用予定であったが年度末に22170円の残額が生じた。本年度は調査旅費の割合が予定より多かったため、次年度は旅費に算入し使用予定である。
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