2018 Fiscal Year Research-status Report
分子マーカーで探る褐藻ホンダワラ属を例とした海藻類の分散能力の解明
Project/Area Number |
17K07533
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
羽生田 岳昭 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 助教 (40379334)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海藻類 / 分散能力 / ホンダワラ属 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋生物の地域集団間の遺伝的分化の程度には、分散能力の違いが大きな影響を及ぼすことが明らかになっているが、日本沿岸に生育する海藻類の分散能力については未だ不明な点が多い。本研究は、褐藻ホンダワラ属藻類を対象として、地域集団間及び集団内の遺伝的多様性の違いを基にそれぞれの種の分散能力や繁殖戦略を明らかにするとともに、種間の分散能力の違いを引き起こす要因を考察することを目的とする。 具体的な研究項目は、1) 対象とするホンダワラ属藻類の採集、2) ミトコンドリアゲノムの塩基配列をもとにした地域集団間の遺伝的多様性の解析、3) マイクロサテライトマーカーの開発及びそれらマーカーを利用した集団内の遺伝的多様性の解析、4) 遺伝的多様性をもとにした分散能力や繁殖戦略の解明、及び種間の分散能力の違いをもたらす要因に関する考察,の4つである。 平成30年度は、日本各地においてホンダワラ属藻類(タマハハキモク、ヒジキ、ヤツマタモク、マメタワラ、キレバモク、ヒイラギモクなど)を採集し、ミトコンドリアゲノムのcox3遺伝子領域及びnad3遺伝子から16S rRNA遺伝子の間の塩基配列を決定した。キレバモクについては、日本沿岸で10のハプロタイプが認められ、ヒイラギモクについては12のハプロタイプが認められた。また、ヒジキについては既に発表されているマイクロサテライトマーカーを試したものの良好な結果が得られなかったことから、次世代シークエンサーを用いたRNA-Seq解析を行い、得られた配列をもとにマイクロサテライトマーカーの開発を行った。これまでに5遺伝子座について多型が認められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タマハハキモクとヒジキについては、nad3遺伝子から16S rRNA遺伝子の間の塩基配列を終え、cox3遺伝子領域の配列決定後に論文の投稿を予定している。また、その他のホンダワラ属藻類(ヤツマタモク、マメタワラ、キレバモク、ヒイラギモクなど)についても西日本を中心にサンプルを入手し、ミトコンドリアゲノム領域の塩基配列決定を進めている。また、ヒジキについてはマイクロサテライトマーカーの開発を進めており、既に5遺伝子座について有効な結果が得られている。従って本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
タマハハキモクとヒジキのcox3遺伝子領域の配列決定を進め、投稿論文を作成する。また、平成30年度までにサンプルが得られていない地域を中心にサンプリングを行い、ミトコンドリアゲノム領域の塩基配列決定を進める。ヒジキについては、マイクロサテライトマーカーの開発を進めると共に、これまでに有効な結果が得られたマイクロサテライトマーカーを用いて、日本沿岸各地の集団の解析を進める。
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Causes of Carryover |
消耗品の納品が遅れ、 31年度の研究費に少額の未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
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