2017 Fiscal Year Research-status Report
陸水域環境評価に資する指標生物DNAタクソノミー情報基盤の確立
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17K07541
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
加藤 幹男 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (30204499)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 種判別 / DNAタクソノミー / DNAバーコード / メタバーコーディング / ヒストンH3 / チトクロムc酸化酵素サブユニット1 / リボソームRNA / 電子博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度当初における実施目標は、試料個体の収集、DNA配列解析、公開用(webなど)資料の準備を効果的に推進することであった。本年度は、主として奈良・和歌山にまたがる紀ノ川水系、京都府の由良川から生体試料を収集し、個体全体および種判別に特徴的な形態部分の写真撮影と、DNA抽出、標的遺伝子の配列解析へと進めてきた。標的遺伝子として、18S rNA, histone H3, COIを選んで解析し、得られた結果は順次国際データベース(GenBank, ENA, DDBJ)に登録している。これまでに、26分類群(18S rRNAを29配列、COIを4配列、H3を70配列)について登録し、さらに23分類群(18S rRNAを21配列、COIを36配列、H3を31配列)が準備中である。 現状の種判別DNAデータ(DNAタクソノミー情報基盤)を評価する目的で、奈良県東吉野村を流れる高見川から得たマスコレクション試料(未分別採取)についてhistone H3遺伝子領域を標的とするハイスループットDNAシークエンシング(次世代シークエンサー解析)を行った。その結果を用いたメタバーコーディング(生物相調査)解析によると、カゲロウ目昆虫に関するDNAタクソノミー情報に比べて、その他の水生昆虫類はデータ量が貧弱(次世代シークエンサー解析によって得られた配列のうち、参照データベース配列に登録されていないものが多数であること)であった。その一方で、histone H3遺伝子領域は、汎用プライマーによる網羅的検出能が充分に高く、今後DNAタクソノミー情報の充実が進めば、メタバーコーディングの標的遺伝子として有望であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA配列データの収集状況については【研究実績の概要】に記したとおりである。 接写レンズあるいは顕微鏡を介して撮影した画像は、個体標本ごとに整理し、画像とDNA配列データを大学のサーバーにおいてweb公開(デジタルリファレンス)する準備が整ってきている。平成30年度中には試験的公開へと進められるものと考えている。並行して、実物標本(フィジカルリファレンス)を保管する場所の整備を進めている。本研究の推進によって、種判別、生物相調査に資するDNAタクソノミー情報の蓄積が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において主要な対象としている水生昆虫類において、カゲロウ目、トンボ目、トビケラ目に比べて、カワゲラ目の種特異的DNA配列情報(バーコード情報)は現状では少ない。形態による種判別が困難なグループも多いと思われるが、実物標本と対応付けたDNAタクソノミー情報を整備することで、将来的な分類キー情報の確立が期待できる。今年度はさらに採集回数を増やし、多種多様な試料を網羅的に収集し、DNAタクソノミー情報基盤の充実につとめる。 また、デジタルリファレンスの試行的なweb公開を進める予定である。
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