2017 Fiscal Year Research-status Report
林床植物における分布域の決定要因:包括的理解を目指した実証研究
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17K07553
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
富松 裕 山形大学, 理学部, 准教授 (40555398)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分布限界 / オオバナノエンレイソウ / 繁殖成功度 / 生態ニッチモデル / デモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
分布域の決定要因を包括的に理解するためには、同一種を対象とした多角的アプローチが不可欠である。東北地方を分布南限とし、夏緑樹林の林床に生育する多年生草本オオバナノエンレイソウでは、緯度に沿って "abundant-center" のパターンを示し、中緯度(石狩地方)で生育密度が最大となること、誠意行く密度が低い低緯度(東北地方)や高緯度(道北地方)では、種子重量や幼植物の加入率が小さい(低い)ほか、一部の個体群では種子生産量が少ないことが分かっている。本研究では、このような緯度勾配に沿った個体群の地理的変異に基づき、3つのアプローチから分布域の決定要因を明らかにすることを目指す。初年度は、低緯度や高緯度において繁殖成功度(種子生産量や種子重量)が低いメカニズムを明らかにするため、9ヶ所の個体群(低緯度:東北地方×3,中心:石狩地方×3,高緯度:道北地方×3)を対象として交配実験を行い、その後の結実状況を調べた。その結果、低緯度では個体サイズが小さく、他家受粉処理を施しても種子生産量が増加しなかったことから、一部の集団において種子生産量が少ないのは資源制限によるものと考えられた。また、低緯度・高緯度いずれの集団でも、集団間他家受粉処理の種子重量が、コントロール処理や集団内他家受粉処理に比べて有意に大きく、集団中に固定した劣性有害遺伝子によって制限されていることが示唆された。以上の結果から、オオバナノエンレイソウにおいて存在量が制限されるプロセスは低緯度と高緯度で異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいるが、当初の計画に比べて遺伝的多様性の評価がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って、野外調査や遺伝的多様性の評価、生態ニッチモデリングの構築を進めることができる見込みである。
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Causes of Carryover |
遺伝的多様性の評価がやや遅れているため、試薬類を購入するための予算を中心として、一部を次年度使用することとなった。
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