2019 Fiscal Year Annual Research Report
Factors behind the abundant-center distribution of a forest herb along a latitudinal gradient
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17K07553
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
富松 裕 山形大学, 理学部, 教授 (40555398)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オオバナノエンレイソウ / 分布域 / 個体群動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
分布域の決定要因を包括的に理解するためには、同一種を対象とした多角的アプローチが不可欠である。オオバナノエンレイソウは、東北地方を分布南限とし、北日本の夏緑樹林に広く生育する多年生草本である。先行研究から、本種は緯度に沿った “abundant-center” のパターンを示し、分布域の中心(石狩地方)で生育密度が最大となることが明らかになっている。本研究では、オオバナノエンレイソウにおける分布域の決定要因を理解するために、緯度に沿った生育密度の地理的変異を生み出す要因を解明することを目的としている。今年度は、分布域の中心(石狩地方)と辺縁(東北地方)にある各3ヶ所ずつの集団を対象として、2013年5月から行ってきたデモグラフィーの観察データを集計し、分析を行った。方形区(1 m×1 m)を単位として、方形区内の各個体にはタグを付し、毎年5月に個体の生育段階と位置を記録してきた。述べ15,000個体以上のデータを分析した結果、幼植物の死亡率は辺縁集団(東北地方)の方が高く、密度依存性を反映していると考えられた。しかし、推移行列モデルを用いて、発芽から開花に至るまでの期待時間を推定したところ、約8年~12年と集団により異なったが、地域間で顕著な違いは無かった。東北地方では開花個体の平均サイズが小さいことから、個体の成長速度が相対的に遅いと考えられた。以上の結果から、東北地方の辺縁集団では、遅い成長速度により開花個体サイズが、ひいては種子生産が制限されている可能性が示唆された。また、マイクロサテライト遺伝子座に基づく遺伝的多様性は低緯度や高緯度の集団で低く、これまでの知見(低緯度や高緯度の集団で遺伝的荷重が大きいこと)と矛盾しなかった。
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