2017 Fiscal Year Research-status Report
植生履歴が草原の生物圏に与える影響:古い草原の歴史的価値
Project/Area Number |
17K07557
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 健太 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80512467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
飯村 康夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (80599093)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植生履歴 / 半自然草原 / チョウ / 地表徘徊性昆虫 / 黒ボク土 |
Outline of Annual Research Achievements |
長野県中・東部の、菅平高原、霧ヶ峰高原、白馬等の地域で、スキー場の植生履歴を、おおむね1900年以降の地形図と空中写真(ともに国土地理院)によって調べ、地理情報化した。70年以上続いている古い草原とそれ以下の新しい草原の候補を選び、現地を下見して在来種が優占する草原かどうかを確認した。その結果、菅平と白馬で、新旧草原の調査地を各約6箇所ずつ、隣接する森林を約6箇所ずつ、選定することができた。 全ての調査地に1×20mの調査区を設け、主に7月と9月に植生調査を行った。また、菅平地域の調査地には5×20mの調査区を設けて蝶相の調査を行った。全ての地域でピットフォールトラップを5つ設置して約一ヶ月待ち、地表徘徊性節足動物の採集を行った。全ての地域で表層土壌の採集を行い、菅平・白馬の限られた調査地で深さ70cmまでの深度別土壌採集を行った。 植生調査の結果では、菅平・白馬ともに、新旧草原の間で維管束植物の種組成が異なることが明らかになり、草原の時間的連続性の履歴が植物群集に強い影響を与えると言うことの一般性が明らかになった。菅平では、古い草原の方が新しい草原よりも種数が多く、特に草原生希少植物の種数が古い草原で多かった。いずれの地域でも、古い草原よりも新しい草原の植物群集が森林の群集に近かった。 節足動物のサンプルは全てソーティングを行っている途中だが、草原には豊かな地表徘徊性節足動物相が存在することが明らかになった。この中には、草原生と考えられてきた種だけでなく、従来は森林生と考えられてきたものも含まれており、今後の解析によって新旧草原の間での群集組成を比較することが興味深い。 菅平・白馬・霧ヶ峰において、明治時代の古地図の判読を行い、いくつかの調査地草原の履歴を古地図からも明らかにすることができ、空中写真・地形図以前の情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
空中写真等情報の地理情報化・植生・チョウ・地表徘徊性節足動物・土壌・古地図調査という全ての調査項目を、複数地域で進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
採集された節足動物サンプルと土壌サンプルの分析を継続する。また、29年度と同様の現地調査を霧ヶ峰地域を中心に行っていく。チョウ相の調査については、菅平地域の調査を重点的に行い、十分な採集数を得て、植生履歴の効果をより精度良く解析できるようにする。
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Causes of Carryover |
分担者において、採集済みサンプルの解析に必要な経費の一部を翌年度に持ち越し、継続解析を可能にする。
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Research Products
(2 results)