2019 Fiscal Year Annual Research Report
The effects of vegetation history on the biosphere in grasslands: the historical value of old grasslands
Project/Area Number |
17K07557
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 健太 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80512467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
飯村 康夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (80599093)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 群集形成 / 絶滅危惧種 / 生物多様性 / 保全優先度 / 蝶 / 甲虫 / 黒ボク土 / 菌根菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
長野県中・東部の、菅平高原、霧ヶ峰高原、白馬等の3地域のスキー場草原で、(1)植生履歴、(2)植物、(3)チョウ、(4)甲虫、(5)黒ボク土の調査を行った。 (1)スキー場の植生履歴を、おおむね1900年以降の地形図と空中写真(ともに国土地理院)によって調べ、地理情報化した。70年以上続いている古い草原、それよりも最近できた新しい草原、森林の3植生タイプの調査地を、各地域・各植生について5~8地点(計58地点)設けた。 (2)全調査地で植生調査を行い、新旧草原の間では維管束植物の種組成が異なること、旧草原の方が新草原よりも植物種数、特に草原性希少種の種数が多いこと、新草原の種組成は森林と類似性があることが分かった。草原の時間的連続性という植生履歴が植物群集に強い影響を与えている。(3)菅平で蝶類の調査を行い、調査場所周辺約1000mの範囲内に古い草原を多いかどうかで種組成が変わり、旧草原の方が新草原よりも指標種が多かった。蝶群集にも草原の時間的連続性が効いており、広い旧草原が特有の蝶群集の保全に重要である。(4)全調査地で地表徘徊性甲虫の調査を行い、従来は森林性と考えられていた多くの分類群が草原に多数生息していることが分かり、新産地・新種の可能性のあるサンプルが多く得られた。科レベルでは新旧草原間の群集構成や多様性に差は見いだされていないが、現在進行中の種同定に基づく解析が期待される。(5)全調査地で土壌調査を行い、黒ボク土が広く分布していること、黒ボク土の黒色度が主に炭化物含有量で説明でき草原の火入れ履歴との関連が疑われること、菅平では草原が森林化が開始してから10~40年後には黒ボク土の黒色土が褪色するという傾向が、アカマツ・シラカバ・カラマツが優先する3種類の森林タイプで共通して見つかり、黒ボク土の黒色土が草原の時間的連続性の指標となる可能性が浮かび上がった。
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