2017 Fiscal Year Research-status Report
Maintenance mechanism of personality and its consequence in crested ibis
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17K07561
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
永田 尚志 新潟大学, 研究推進機構, 教授 (00202226)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トキ / 個性 / 大胆さ / 新規性 / 生存率 / 適応度 / DRD4多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
個性は、集団中で様々な状況で個体が示す一貫した行動上の傾向であり、多くの動物において、大胆さ、探索行動、攻撃性などの行動形質で個性を示すことが知られている。最近、鳥類などの脊椎動物ではドーパミン受容体D4(DRD4)の多型が個性を生じさせる候補遺伝子としてのひとつであると考えられている。これまでトキにおいても、DRD4遺伝子の保存領域配列に9カ所の部位で7つのSNP多型と2つの挿入欠失変異があり、4種類の遺伝子多型が存在することが確認されている。本研究課題では、大胆さや臆病さ、分散行動等の個性形質と関連していると考えられるDRD4遺伝子多型とトキの行動特性との関連性を解明し、それが放鳥後の個体の生存や繁殖などの適応度に与える影響を解明する。 佐渡島で2013年~2016年に放鳥された雌個体35羽のDRD4遺伝子多型が放鳥後の個体の生存などの適応度に与える可能性について予備的な解析を行った。DRD4多型が影響を与えると考えられる個体属性として、放鳥後1年後の生存率、放鳥直後の採餌効率、分散距離を解析した。4つのDRD4ハプロタイプのうち、ハプロタイプⅣ型を持つ個体は放鳥後の採餌効率が低く、死亡率が高いことが明らかになった(Fisher exact test, P=0.065)。ハプロタイプI型とⅢ型を持つ生存率が高く、放鳥地より分散する傾向があったが、サンプル数が少ないため有意ではない。ハプロタイプII型をもつ個体は少ないため、統計的な検定はできなかった。これらの結果から、トキの雌では、特定のDRD4多型が放鳥後の生存に影響を与えている可能性が示唆された。ハプロⅣ型を持つ個体は、新規探索性が低いため、野外での採餌効率が低く、そのため、放鳥後の生存率が低くなったと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既放鳥個体の生態データのデータベース作成は順調に進んでいて、雌個体のDRD4遺伝子型情報と生存、分散等の個体形質の関連性の解析はうまくいっている。既放鳥の雌個体の個性解析は順調に終了しているが、雄個体についてはDNAサンプルが大きく欠損している部分があるため、現在、これらのDNAサンプルが入手できるようにトキ保護センターに依頼している状況である。そのため、当初、H29年度予定していた既放鳥個体のDRD4多型と個性形質の関連性の解析が半分しか終了していない。また、新既放鳥個体の放鳥後の行動・生態形質についての調査は順調に進んでいるものの、飼育下の個体への新規性や大胆さを検出するための実験方法については環境省や飼育関係者と調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
既放鳥雄個体のうち手許にないDNA試料(手配中)を早急に入手してDRD4多型を行動特性との関連性を明らかにすることで、雄においても雌と同じような傾向があるのかを確認する。また、新既放鳥個体のDRD4多型と個性形質の関係を実験的な尺度を使って測定することで、新規性(大胆さ)に与える影響を解明する予定である。具体的には、放鳥前の順化訓練中に餌場に新規の物体を提示し、各個体が新規提示物体に接近するまでに要する時間をもって、新規性(大胆さ)の指標として、これを複数回、繰り返すことで各個体の個性属性を計測する方法を確立する予定である。また、大胆さには年令も影響している可能性があるため、年齢の効果を統計的に抽出する予定である。
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Causes of Carryover |
既放鳥トキのDNA解析用試料に欠損があったため、試料の入手の再手配にて間取り、年度内にDNA解析ができなかったために、H30年度に解析費用を繰り越した。不足分の解析試料の入手の見込みがたったため、H30年度にDRD4遺伝子多型解析を実施する薬品、消耗品に使用する予定である。また、映像データ収集のための機材が予定額より大幅に安いものが発売されたため、物品費も安く収まった。H30年度に大胆さの解析に必要な機材を複数セット追加する予定である。
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