2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07563
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
瀧井 暁子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (00792607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 俊昭 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30409255)
泉山 茂之 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (60432176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ツキノワグマ / 血縁度 / GPS首輪 / 行動追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
ツキノワグマは単独性で乱婚性の大型哺乳類であるが、直接観察が困難なために社会行動に関する研究報告はきわめて少ない。しかし、DNA解析やGPSによる追跡技術の向上により、クマ類の個体群構造や分散様式が明らかになりつつある。本研究では、継続的にツキノワグマの行動追跡調査を実施している長野県上伊那地域の中央アルプス山麓において、ツキノワグマの血縁が社会行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。平成29~30年度は、ツキノワグマにGPS首輪を装着し個体追跡の実施およびDNA多型解析による血縁関係の推定を行い、個体の近接関係に血縁関係が要因としてどの程度影響を与えているかについて解析を行う予定である。 平成29年度は、上伊那地域の中央アルプス山麓においてツキノワグマ9頭にGPS首輪を装着した。このうち7頭(オス2頭、メス5頭)は、夏季から秋季にかけて行動圏が重複しており、近接関係も確認された。同地域においてイノシシ捕獲檻等で錯誤捕獲され、放獣された個体についても可能な限り体毛サンプルを採取した。GPS首輪を装着した9頭のうち、1頭は狩猟により捕殺され、1頭は首輪の故障によりデータ取得ができていない。2008~2017年に採取した約200の血液および体毛サンプルから、DNA抽出作業を終え、マイクロサテライトDNA解析により血縁度の解析を始めている。また、上伊那地域においてこれまでGPS首輪による行動追跡を行った個体について、近接関係の解析を行うためのGPS測位データの整備作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPS首輪を装着したツキノワグマの頭数は、他予算で購入したGPS首輪を用いて平成29年度計画よりも多く、大部分の個体から順調に位置データの取得を行っている。一方で、追跡期間中の捕殺や故障により追跡頭数が減った。サンプル収集およびDNA抽出作業はほぼ予定通り進んでいるが、血縁度の解析に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、ツキノワグマの捕獲・GPS首輪の装着作業を継続する。調査地域でこれまで継続的に追跡しているものの、昨年度捕獲されなかった個体の首輪装着を行う。また、主にメス個体が春~夏に利用する地域においてGPS首輪未装着個体がどの程度生息しているかを把握するためにセンサーカメラを設置し調査を行う。DNA解析のためのサンプル収集は継続して実施し、血縁度の解析により血縁関係の有無を判定する。また、行動圏の重複および個体同士の近接関係の解析を行い、オス-メス、メス‐メス、オス‐メスそれぞれについて近接関係を計測する。研究データ公表にむけたデータ解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) ・当初計画よりも低価格でGPS首輪を購入できたために次年度使用額が生じた。 (使用計画) ・次年度使用額は、調査地内に生息する未標識個体の確認のために、センサーカメラの購入に使用する予定である。
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