2019 Fiscal Year Annual Research Report
Is the social behavior of Asiatic black bears affected by genetic relatedness?
Project/Area Number |
17K07563
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
瀧井 暁子 信州大学, 先鋭領域融合研究群山岳科学研究拠点, 助教(特定雇用) (00792607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 俊昭 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30409255)
泉山 茂之 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (60432176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ツキノワグマ / GPSテレメトリー / 個体間関係 / 血縁関係 / 交尾行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ツキノワグマ(以下、クマ)は単独性で繁殖システムは乱婚とされているが、直接観察が困難なため社会行動に関する研究報告はきわめて少ない。本研究は、血縁がクマの社会関係におよぼす影響を明らかにすることを目的とする。中央アルプス北部における9ヶ年のGPSテレメトリーデータから個体間の行動圏、近接関係を把握するとともに、体組織を用いたDNA多型解析による血縁度推定から社会行動と血縁関係を明らかにした。 追跡個体の約半数の行動圏は大きく重複した。のべ113個体(470ペア)の同一時刻における個体間距離50m以下の近接は200ペアで確認し、異性同士が54%と最も多く、同性同士は25%以下だった。異性同士の平均近接時間は7月にピークを示す明確な季節性があり、同性同士の3.3倍長かった(16.6時間、最大293時間)。持続的近接をした異性同士は、1ペアを除き血縁関係はなく、近親交配を回避していると考えられた。調査地における主な交尾期は5月中旬~9月中旬と推測され、従来クマでいわれていた期間よりも長かった。 近接したオス同士の89%に血縁関係はなく、オスの多くが分散個体であることを示していた。持続的近接をしたオス同士は1ペアを除き血縁関係はなかった。近接したメス同士の43%に血縁関係があり、メスは出生地への定着性が強いことを示していた。行動圏の重複率の高いメス同士は60%に血縁関係があったが、血縁の有無と平均近接時間には関係がみられなかった。これらの結果から、血縁が同性間の近接行動に与える影響については低いと考えられるものの、利用場所等のさらなる解析が課題である。本研究では不明な点の多かったクマの個体間関係の詳細を初めて解明することができた。異性間の長時間の近接は、クマの生態の理解にあたり交尾行動の重要性を示唆しており、クマの人里出没要因を検討する際にも考慮すべき重要な結果となる。
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Research Products
(8 results)