2018 Fiscal Year Research-status Report
特定外来種ツマアカスズメバチの食性と繁殖性を利用した防除の検証試験
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17K07575
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 純一 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (40530027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
熊野 了州 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90621053)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 外来種 / 交雑 / 繁殖干渉 / ミトコンドリアDNA / スズメバチ / 大分市 / 壱岐市 / 対馬市 |
Outline of Annual Research Achievements |
ツマアカスズメバチの繁殖行動の観察調査により、在来スズメバチの女王バチと本種の雄バチとの種間交尾の可能性が示唆されたため、分子生態学的解析手法により分析を行った。ツマアカスズメバチから開発してあるマイクロサテライトDNAマーカーを利用して、巣の個体から女王バチの交尾頻度(回数)、必要精子数、近交係数、働き蜂による雄生産の有無等の解析し、不妊化雄放飼による防除に必要な雄数の推定に利用したところ、対馬市では在来スズメバチのオオスズメバチ、キイロスズメバチ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチの4種の女王バチのうち、キイロスズメバチの女王バチとツマアカスズメバチの雄バチとの種間交雑が確認された。スズメバチにおける種間交雑は、はじめての発見である。対馬ではキイロスズメバチの減少が確認されていることから、帰化した外来種により繁殖干渉が起こり、在来種の減少している可能性が初めて確認された。新たに大分市で侵入が確認されたツマアカスズメバチの起源についてミトコンドリアDNAの全長解析から推定したところ、中国が起源であること、これまで日本に侵入していた系統と同じ遺伝子型であることを明らかにすることができた。本種特異的な駆除試験では、設置場所は落葉広葉樹の樹冠部20m以上で駆除数が最大化していた。捕殺器の誘引用餌には、これまで花や果実で採餌行動を観察することができた植物種の芳香成分を入れた発酵糖液が最も高い誘引効果があることがわかった。食性解析は、巣内にいた幼虫の胃内容物からDNAを単離し、DNAバーコーディング法により被食生物種を特定したところ、樹冠部に生息する昆虫種が多く、ミツバチや希少種の補食量は少ないことが明らかになった。また不妊化処理条件をキイロスズメバチ雄バチで特定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度から引き続き現地での防除効果の検証を進めながら、捕殺器の形状の改良、設置場所、設置高度、誘引用の餌飼料および忌避用の匂い成分等について各種条件を変えた比較試験を行い、ツマアカスズメバチの女王バチ特異的かつ捕殺数について前年度よりも良い条件を見つけることができた。また、交尾頻度、交尾場所、交尾条件の特定を進め、室内試験による不妊化雄放飼に必要な雄数や効果の予測を行い、不妊化処理の条件についても前年度から同様に継続したことで不妊に必要な処理条件を確認することができた。さらに対馬島で在来スズメバチのうちキイロスズメバチが顕著に減少しているが、ツマアカスズメバチの雄バチとキイロスズメバチの女王バチとの間で繁殖干渉が起きていることが減少要因の1つであることを明らかにすることができた。現地での防除効果の推定には、前年度と同じように個体群密度データに加えて、飼養されているニホンミツバチの働きバチを捕食にくるツマアカスズメバチの働きバチ数、開花植物への飛来個体数、巣の駆除依頼件数、誘引捕殺器により捕獲されたツマアカスズメバチの女王バチ個体数と、過去の分布域・密度等のデータと比較したところ、より多くの捕獲数および個体数の減少を確認することができた。対馬島内における帰化状況については、継続して記録を取ることも計画通りにできている。最終年度については、前年度までに見つけた最適条件による女王の捕殺効果について全島内に捕殺器を設置して検証を行う準備も順調に進められていることから、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
対馬島での誘引および防除効果の検証を進めながら、捕殺器の形状の改良、設置場所、設置高度、誘引用の餌飼料および忌避用の匂い成分等について各種条件を変えた比較試験を行い、本種特異的かつ捕殺数の多い最適条件を見つけ完成を目指す。 ツマアカスズメバチの交尾頻度、交尾場所、交尾条件の特定については、開発したマイクロサテライトDNAマーカーと観察法により解析を進める。対馬では在来スズメバチのうちキイロスズメバチの女王バチとツマアカスズメバチの雄バチ繁殖干渉が確認されたため、在来種のオオスズメバチ、キイロスズメバチ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチで繁殖干渉の継続調査および女王バチの交尾頻度、交尾場所、交尾条件の特定を試みながら、種間比較を行い繁殖干渉の回避方法について考察する。さらに在来スズメバチを使用した室内試験による不妊化雄放飼に必要な雄バチ数や効果の予測も行う。不妊化処理の条件についても前年度から同様に在来スズメバチのキイロスズメバチを使用して継続する。現地での防除効果の推定には、密度データに加えて、飼養されているニホンミツバチを捕食にくるツマアカスズメバチおよび在来スズメバチの働き蜂数、開花植物への飛来個体数、巣の駆除依頼件数、誘引捕殺器により捕獲された女王個体数と、過去の分布域・密度等のデータと比較し、選択的ツマアカスズメバチの防除効果について検証する。対馬島、壱岐島および九州各地に侵入したツマアカスズメバチ個体群の侵入元の可能性の高い韓国・台湾・中国の個体については、ミトコンドリアDNAの遺伝子型解析を行い、日本への侵入起源の推定を行う。北九州市、大分市、日南市、壱岐市ではその後の帰化状況についても継続して現地での分布調査を行う。
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Causes of Carryover |
ツマアカスズメバチの雄バチの不妊化処理による影響調査を行うために対馬での在来スズメバチの雄バチを使用した試験の費用および旅費の使用を予定していたが、台風による影響のため試験予定の観察対象の巣が落下・破損したため延期となり、他の野生巣を探していたが、スズメバチの繁殖期間が過ぎたため試験が不可能になったので、次年度に予算を繰り越しを行うこととなった。
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Research Products
(4 results)