2017 Fiscal Year Research-status Report
Monandry by female genital mutilation and its evolution in orb-web spiders
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17K07576
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中田 兼介 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80331031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁宮 悠介 長崎総合科学大学, 総合情報学部, 准教授 (00399213)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 性的対立 / クモ / 交尾器 / 種間比較 / 出会い頻度 / 触肢 / 個体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴミグモ属三種で交尾器破壊と再交尾抑制との関係について観察を行った。ギンナガゴミグモでは、14例観察した交尾のうち、メスの交尾器が破壊されたのは4例にとどまり(28.6%)、90%程度の頻度で交尾器が破壊されるギンメッキゴミグモより低かった。交尾器未破壊メスは多くが別のオスとの再交尾を拒絶し、求愛中のオスを攻撃して追い払ったが、求愛を受け入れたメスはすべて再交尾に成功した。破壊されたメスにもオスを攻撃したものが見られたが、オスの求愛を受け入れたメスはすべて再交尾に失敗した。ミナミノシマゴミグモでは34例観察した交尾のうち、メスの交尾器が破壊されたのは15例(44.1%)だった。そのうち7例で再度オスを導入したがそのすべてで再交尾は失敗した。交尾器が破壊されなかったメスのうち3例で再交尾を試みたところ1例で成功した。ゴミグモでは、観察した8例の交尾のすべてで交尾器破壊は見られなかった。そのうち7個体でオスを再度導入したところ5例で再交尾に成功した。 ギンメッキゴミグモ5個体の処女メスと一個体のオスを2mx10mの観察アリーナに放して一週間放置し、オスが何個体のメスと交尾するかを計測する実験は、4回行った。その結果、交尾メス数はそれぞれ1,1,2、3で、両性の出会い頻度は低いことが示唆された。 左右二本あるオスの触肢を片側だけ破壊し、1メスに1)同じ側の触肢を破壊した二個体のオス、2)異なる側の触肢を破壊した二個体のオス、を与えて交尾させた場合で、交尾器破壊率を比較したところ、2)で有意に高かった。このことは、左右の触肢の挿入が交尾器破壊を成功させるのに重要であることを意味しており、挿入時に触肢が垂体基部の側面を切り裂いている可能性を示唆する。 また、稀に生じる交尾器破壊不成立の理由についてギンメッキゴミグモで調査を行い、交尾経験とオスの個体性が影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ギンナガゴミグモ、ミナミノシマゴミグモ、ゴミグモにおける交尾器破壊と再交尾抑制との関係の調査については、当初の予定よりも多数の観察を重ねることができた。その結果、三年かけて実現しようと考えていた観察数のうち、その6割程度が既に完了しており、一定の結論が得られるまであと少しと言う状況になっている。おそらく30年度に更に観察を重ねることによって、十分な観察数に達し、前倒しで結論を得られると考えられる。また30年度以降に行うことを計画していた、2)稀に生じる交尾器破壊不成立の理由、についての調査を29年度に前倒しで行っている。これらの点は、当初の計画以上に進展が見られている部分である。 一方、これらの調査に研究エフォートを注ぎ込んだために、本年度計画していた3)メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響、についての調査、具体的には、実験的に複数オスと交尾させたメスを飼育して、その産卵数等を計測する調査については、実行することができなかった。これは、進捗状況としては計画より遅れていると評価できる要素である。 最後に、4)オスメスの出会い頻度の推定、については、計画通りに実験を遂行しており、進捗状況としては順調であると評価できる。 これらを総合すると、本研究で明らかにしようと計画していた4つの項目のうち、1)についてはほぼ完了、2)は予備調査の段階ながらも1/3ほどが完了、3)は進捗率はほぼゼロ、4)は1/3ほどが完了と言うことになる。これらを平均すると、3年間のうち1年が過ぎた段階で、5/12が完了したことになる。このようなことから、今年度の進捗状況としては、概ね順調であると評価しても良いだろうと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ギンナガゴミグモ、ミナミノシマゴミグモ、ゴミグモにおける交尾器破壊と再交尾抑制との関係の調査については、更に観察例を重ねる。 2)稀に生じる交尾器破壊不成立の理由については、調査結果を解析し、論文にまとめることを計画している。 3)メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響、については、遅れている計画を取り戻すために本年は中心的に研究エフォートを注入する。29年度の末にそのための準備に取り掛かっている。 4)オスメスの出会い頻度の推定については、29年度の経験から、特段問題なく研究が遂行できる見通しを得ている。30年度以降は、この見通しに添って観察を重ねていく予定である。
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Causes of Carryover |
メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響についての研究を遂行するにあたって、動画解析用コンピューターの購入のための費用を計上していたが、この研究が進捗しなかったために、予定の支出を行うことができなかった。その結果として、次年度使用額が生じた。次年度は、研究を進める予定であり、1年遅れではあるが、動画解析用コンピューターを購入する計画である。
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