2018 Fiscal Year Research-status Report
Monandry by female genital mutilation and its evolution in orb-web spiders
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17K07576
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中田 兼介 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80331031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁宮 悠介 長崎総合科学大学, 総合情報学部, 准教授 (00399213)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クモ / 交尾器 / 繁殖生態 / 交尾行動 / 性選択 / 雌雄の対立 / 求愛 |
Outline of Annual Research Achievements |
交尾器破壊と再交尾抑制との関係について、昨年度に引き続き観察を行った。ギンナガゴミグモでは37例観察した交尾のうち、メスの交尾器が破壊されたのは15例にとどまり(40.5%)、90%程度の頻度で交尾器が破壊されるギンメッキゴミグモより有意に低かった。既交尾メスは2個体目のオスの求愛に対し、すべてが攻撃行動を示し、80%のオスが求愛を中止し逃げ出した。一方残った二割のオスは求愛を続け、メスの交尾器が破壊されていない場合(12%)交尾に成功した。交尾器が破壊されている場合(8%)は交尾できなかった。ミナミノシマゴミグモでは57例観察した交尾のうち、メスの交尾器が破壊されたのは28例(49.1%)だった。そのうち 12例で再度オスを導入したがそのすべてで再交尾は失敗した。また交尾器が破壊されなかったメスのうち14例で再交尾を試みたところ6例で成功した。ゴミグモでは、 観察した12例の交尾のすべてで交尾器破壊は見られなかった。そのうち10個体でオスを再度導入したところ5例で再交尾に成功した。 ギンメッキゴミグモのオスが何個体のメスと出会うかを実験的に計測し、1.86回(n=7)という結果を得た。このことから、両性の出会い頻度は低いことが示唆された 交尾器破壊で1回交尾となることのメスのコストを、ギンメッキゴミグモを用いて調べた。1オスから2回挿入を受けた通常交尾メス、2オスから1回ずつ挿入を受けたメス、2オスから合計3回挿入を受けたメスの3つのグループを用い、飼育下で産卵させ、産卵数と孵化率を計測した。その結果、メスの産卵回数は1-11回と大きく変異することがわかった。また、後半の産卵において孵化率が下がる傾向と3回挿入メスで孵化率が高い傾向が見られた。しかしながら、一部の卵がダニによる捕食を受けていたため、サンプル数が十分ではなく、統計的な解析を行うことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ギンナガゴミグモ、ミナミノシマゴミグモ、ゴミグモにおける交尾器破壊と再交尾抑制との関係の調査については、当初の予定よりも多数の観察を重ねるこ とができた。その結果、三年かけて実現しようと考えていた観察数を二年で達成することができ、ギンメッキゴミグモでわかっていた現象と大きく違う現象がこの3種で見られるという結論を得ることができた。この点は、当所の計画以上に進展が見られている部分である。 また、昨年度実行することができなかった、3)メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響、についての調査、具体的には、実験的に複数オスと交尾させたメスを飼育して、その産卵数と孵化率を計測する調査については、今年度実行することができ、結論を得るにはサンプル数が十分でないものの一定の傾向を持った結果を得ている。これは、計画の進捗として順調に進んでいるものと評価できる点である。また、4)オスメスの出会い頻度の推定については、計画通りに実験を遂行しており、これも進捗状況としては順調であると評価できる。 これらを総合すると、本研究で明らかにしようと計画していた4つの項目のうち、1)については完了、2)も完了、 3)は進捗率は半分程度、4)は2/3ほどが完了と言うことになる。これらを平均すると、3年間のうち2年が過ぎた段階で、19/24が完了したことになる。1)と2)については学会発表も行っている。このようなことから、今年度の進捗状況としては、概ね順調であると評価しても良いだろうと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ギンナガゴミグモ、ミナミノシマゴミグモ、ゴミグモにおける交尾器破壊と再交尾抑制との関係の調査については、ギンナガゴミグモの結果を中心に論文化する。 2)稀に生じる交尾器破壊不成立の理由については、2018年度に論文にまとめる計画であったが、未達のため、2019年度に論文化する。 3)メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響、については、引き続き実験を継続し、サンプル数を増やす。また、ダニによるサンプル数の減少を抑制する方法を考案する。 4)オスメスの出会い頻度の推定についても引き続き実験を継続する。
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Causes of Carryover |
メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響についての研究を遂行するにあたって、動画解析用コンピューターの購入のための費用を計上していたが、交尾行動のビデオ撮影は行ったものの、解析までには至らなかった。また、実験・観察を優先して行ったため、2018年度は論文を1本も作成することができなかった。そのため、予定していた英文校閲費の支出がなかった。また、2018年度は国内学会のうち2つが関西で開催されたため、国内旅費の使用額も計画より少なかった。2019年度はコンピューターの購入および英文校閲費として支出を予定している。
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Research Products
(7 results)