2017 Fiscal Year Research-status Report
無汗症の病態を熱中症予防戦略の確立につなげる:革新的手法による汗腺制御様式の解明
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17K07591
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
室田 浩之 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90363499)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発汗 / 無汗症 / アトピー性皮膚炎 / バリア機能 / 汗 / メタボローム / タイトジャンクション / 病態 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 後天性全身性無汗症の病態に基づいた治療を確立するためには、病因の解明が必須である。経験的にステロイドパルス療法の奏効する症例がいることから、炎症や免疫学的機序の関与が示唆される。病態に関わる液性因子(サイトカイン・ケモカイン等)の存在を探索的に解析するため、サウナ浴による温熱発汗試験の際サウナ浴前後で血清を採取し、温熱負荷によって発現の影響を受ける液性因子を蛋白質多項目同時解析(luminex法)によって評価した。今回、パイロット的に4症例で検討を行ったところ発汗刺激前後でいくつかのサイトカイン、ケモカイン、具体的にはEGFやNGFといった増殖因子、リンパ球の活動性に影響する因子や可溶型受容体の発現に変化がみられた。 (2)無汗症、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚組織では汗腺の周囲にdermocidinと呼ばれる抗菌ペプチドが見られる。本来、dermocidinは汗中にしか含まれない抗菌ペプチドであることから同疾患では汗が組織中に漏出し乏汗を生じ、炎症を助長するのではないかと考えられた。そこで、汗腺のwater barrierを構築するタイトジャンクション分子を探索し,claudin-3であることを確認した。 (3)無汗を伴うアトピー性皮膚炎患者の汗のメタボローム解析をNMRによって実施した。その結果、汗中に疾患重症度と相関してグルコース濃度の上昇が確認された。汗腺におけるグルコーストランスポーターの発現をレーザーマイクロダイセクションによって回収した汗腺組織で確認し、GLUT2の発現に異常の生じていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点までに本研究に関する以下の論文2編が受理された。 1. Yamaga K, Murota H, Tamura A, Miyata H, Ohmi M, Kikuta J, Ishii M, Tsukita S, Katayama I. Claudin-3 Loss Causes Leakage of Sweat from the Sweat Gland to Contribute to the Pathogenesis of Atopic Dermatitis. J Invest Dermatol. 2017 Dec 23. pii: S0022-202X(17)33356-0. doi: 10.1016/j.jid.2017.11.040. 2. Ono E, Murota H, et al. Sweat glucose and GLUT2 expression in atopic dermatitis: Implication for clinical manifestation and treatment. PLoS One, accepted.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)無汗症の血中および汗中のバイオマーカー探索について、症例の拡充と裏付けとなる研究の追加、また発汗に及ぼす影響をin vivoで検証する。その結果が病態の理解と治療の確立に重要な示唆を与えるものと期待される。 (2)アセチルコリンは発汗を誘導する物質である。アセチルコリンを経皮的にイオントフォレーシスによって投与すると投与部周囲に強制的に発汗が誘導される。皮膚表面に噴出した汗を定量的に測定するのが軸索反射性発汗試験である。この方法では自律神経機能を評価できないことから、確立された自律神経評価方法(起立時循環動態)による評価結果をもとに軸索反射発汗と自律神経の関係を評価する。自律神経評価について末梢の血流と発汗活動の関係をヒトで明らかにするために血流ドップラーによる末梢血流評価を行い、特に着座から起立姿勢に生じる自律血流調節作用を観察する。 (3)汗腺収縮後(発汗後)の陰圧評価と経皮的治療への関与の評価:汗腺の治療は皮表から薬剤を到達させる経路が最も効率のよいシスステムと考えられる。特にAIGA のような汗腺の異常で生じる疾患や限局性局所多汗症の外用治療に応用可能であると考えられる。閉鎖療法、外用基剤などdrug delivery に最も効率のよい外用治療方法の探索を行う。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた自律神経機能検査機器の価格は250万円であった。直接経費は260万円だったため、機器の購入により他のプロジェクトに必要な予算が確保できないと考えた。そこで予算枠内で実施可能な自律神経検査方法を来年度で導入予定である。
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Research Products
(3 results)