2017 Fiscal Year Research-status Report
自発的な胚発生誘導システムを搭載した植物遺伝子組換えベクターの開発
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17K07600
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
井川 智子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (00360488)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胚発生関連遺伝子 / 植物遺伝子組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に植物で遺伝子組換え体を作出するためには、体細胞へ遺伝子を導入し、組み換え細胞から再び植物体を再生させるプロセスが必要である。しかし多くの植物種ではこれらのプロセスを可能にする適切な条件を設定することが難しい。それゆえ、遺伝子組換えが困難な非モデル植物種を用いた植物科学研究展開の妨げとなっている。本研究では遺伝子導入用ベクターに、自発的に不定胚形成を誘導する遺伝子を座乗させ、目的遺伝子導入と植物体再生を可能にする基盤システムを構築することを目的とした。 シロイヌナズナにおいてはこれまでに複数種の胚発生関連遺伝子が同定されている。それらを導入したT1世代以降の組換え植物体において、導入遺伝子の効果を調査した報告はいくつかあるが、胚発生関連遺伝子を導入した外植片の培養中における反応を調査した例は少ない。そこで本研究では、まずシロイヌナズナ由来の胚発生関連遺伝子を複数種クローニングし、それぞれアグロバクテリウム法によってタバコ葉切片へ導入して効果を検証した。その結果、1遺伝子のみの効果では有意な再分化率の上昇には至らなかった。また、2つの胚発生関連遺伝子を発現させた場合に、再分化において抑制的な効果を示す組合せもあった。また、これらの遺伝子を導入した際、コントロールと比較して植物ホルモンに対する反応性が異なることが見出された。今後は外植片で発現するこれら胚発生遺伝子の相互効果について調査すると共に、効率的な遺伝子組換え体作出技術の開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胚発生関連遺伝子を外植片に導入し、再分化個体を得るまでの過程において遺伝子の効果を検証した報告はほとんどない。本研究では、胚発生に重要とされる複数遺伝子のクローニングとベクター構築を行い、その効果を検証できた。また、組合せによっては期待とは異なるが、再分化を抑制する効果も見出され、胚発生関連遺伝子の新規の効果であることを示唆した。当該年度の成果をもとに、次年度で行う評価実験に使用するベクターシステムの考案にも繋がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
胚発生関連遺伝子を外植片に導入した後、再分化が誘導されるまでのプロセスにおいて遺伝子の効果を検証した報告は少なかったが、当該年度の結果によって、使用する胚発生遺伝子が複数必要であること、またその組合せが重要であることが見出された。そこで、複数の胚発生遺伝子を様々な組合せで発現させるベクターの構築に着手したところである。 今後はそれらの評価法をベースとして、再分化促進に有効なシステムを構築するとともに、胚発生関連遺伝子の相互効果についてもさらに追究する。
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Causes of Carryover |
平成29年度では遺伝子クローニング等が概ね予定通りに進行し、さらに関連する試薬類の消費が少なかったために、当初予定していたほどの消耗品量・解析料が抑えられた。しかし今年度の成果をもとに、さらなる遺伝子のクローニングと複数種のベクター構築が計画されるため、平成30年度において使用する。
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Research Products
(1 results)