2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of rapid mapping system, identifing mutant gene loci with the soybean mutant library.
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17K07604
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
渡邊 啓史 佐賀大学, 農学部, 講師 (40425541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穴井 豊昭 佐賀大学, 農学部, 教授 (70261774)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダイズ / 突然変異集団 / 変異遺伝子 / マッピング / 次世代シークエンス解析 / 遺伝資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題ではダイズ国産品種「フクユタカ」の突然変異集団から、表現型選抜によって得られた複数の突然変異体を対象に、個々の変異遺伝子について、国産大豆品種との交雑後代と次世代シークエンサーを利用したバルク分析法を組み合わせることで、効率的な変異遺伝子の染色体上の座上領域の特定および、個々の変異遺伝子に連鎖するDNAマーカーの作出法の開発を行うことを目的としている。 今年度は突然変異集団から変異体を選抜し、近縁国産ダイズとの交雑による分離集団の育成および次世代シークエンス解析時におけるライブラリー作成条件の検討と変異遺伝子を対象とした遺伝分析に利用可能なDNAマーカーの作成を中心に研究を実施した。 分離集団の育成に関して、11の変異体候補系統と国産ダイズ品種であるトヨシロメとの組み合わせにおいて交配を実施し、得られたF1個体を2018年度冬季に温室を利用して栽培を行っている。DNA分析の結果、各F1個体の遺伝子型に問題はなく、次年度に使用予定のF2種子が十分に得られる見込みである。またイソフラボンの含量や組成に関する突然変異遺伝子の遺伝分析に関連して、これまでに育成したF2集団は4集団に達しており、これらの分離集団を用いて次年度の解析を行う。一方で遺伝分析に用いる手法の一つとして次世代シークエンサーを利用する予定でいるが、今年度は解析に用いるDNAライブラリー作成条件の検討を実施した。特に制限酵素を利用したゲノムライブラリー調整時に異なる塩基配列を持つアダプターを複数利用することで次世代シークエンス解析時に得られるデータ量の改善に成功した。またトヨシロメおよびフクユタカ間の交雑で得られた分離集団を対象とした遺伝分析に利用できるDNAマーカーの設計を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では研究期間を3年と設定し、1年目に変異体の評価および分離集団の育成、2年目に分離集団の栽培と形質評価に基づく、バルク集団の作成及び次世代シークエンス解析、3年目に検出した変異遺伝子周辺領域におけるDNAマーカーの作出と評価という一連の解析を介して、これまでの一般的な遺伝子マッピング技術を大幅に簡略化することを目指しており、本課題で目標と挙げている多数(10程度)の変異遺伝子の座乗領域を明らかにすることを目標としている。今年度の成果から、十分な数の分離集団が得られており、今後も遺伝分析に用いる分離集団が確実に増加していることが見込める状況にある。加えて、次世代シークエンス解析における得られるデータ量についても改善が見込まれており、より低コストでの遺伝子マッピングが実施できるものと期待できる。一方で育種現場で利用可能なDNAマーカーについても、融解度曲線を利用したDNAマーカー作成技術を開発することで、DNAマーカーを利用した個体選抜の際に信頼性の高いDNAマーカーの作成が可能になった。これらの技術を組み合わせることで、変異遺伝子の高速マッピングが可能かどうか、次年度以降に検証を実施する予定でいるが、当初の目標に対して、材料の育成および技術の開発の点から十分な進捗であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は分離集団の栽培と表現型の調査を目的として、各交配組み合わせで得られたF2集団を夏季に圃場にて栽培する。各交配組み合わせあたり、集団を構成する個体数を100-150個体とし、全体の集団のサイズを1000-1500程度とする。慣行栽培によってそれぞれの個体からF3種子を得る。また栽培中に各個体から葉をサンプリングし、DNAを抽出する。それぞれのF2個体から得られたF3種子を10-20粒混合して破砕し、HPLCによってイソフラボン含量を測定する。 また、表現型に基づいたバルクの作成および次世代シークエンサー解析用DNAライブラリーの作成を行う。具体的には、変異遺伝子による表現型の分離が認められた集団を対象に、表現型の上位12個体、下位12個体を選抜し、夏季に抽出したDNAを用いて次世代シークエンス解析に用いるライブラリーを作成する。一つのライブラリーに含まれる個体数を変化させることで、変異遺伝子の染色体座乗領域を最低限検出するために必要なライブラリー作成の最適条件を検討する。 随時、新規に得られた突然変異系統を対象に表現型の確認および交配を実施し遺伝分析に利用できる分離集団の数を増加させる。
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Causes of Carryover |
現在、本課題に関連したDNAマーカー作出技術の開発において、投稿論文(英文)を作成している段階にある。本課題では課題の実施にあたり、英文校閲等の費用を予算に計上しているが、校閲者とのやり取りには時間を要すること、校閲作業が完全に終了するまでは必要な経費が不明であること、年度末に論文投稿の時期が重なったことから、校閲に必要な経費として予算の未使用額が発生した理由である。校閲は現在終了しており、翌年度の研究期間の開始後、未使用金額の大部分について直ちに執行するために、本課題の申請時に計上した予算の執行計画を大きく変更する必要はない。
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