2017 Fiscal Year Research-status Report
スリランカ原産のトビイロウンカ抵抗性品種の遺伝的多様性の解明
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17K07606
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イネ / トビイロウンカ抵抗性 / ゲノムワイド連関解析 / 集積系統 / 広域的な抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
インド・スリランカ原産の在来イネ品種は、トビイロウンカ抵抗性を保有する割合が高いことが知られている。近年、アジア全域の トビイロウンカに対して、広域的な抵抗性を示す品種 PTB33 や Rathu Heenati が存在することが明らかになった。本研究では、研究期間内に、以下の3つに関して明らかにする。(1)スリランカ原産のトビイロウンカ抵抗性品種が保有する遺伝子座を網羅的に特定する、(2)スリランカ原産の品種を用いて、既報の遺伝子座に関する対立遺伝子間の差異を推定、(3)広域的な抵抗性品種PTB33やRathu Heenatiが保有する遺伝要因の解明を行っている。 (1)として、異なる地域・国由来のトビイロウンカ集団をもちいて、ゲノムワイド関連解析を行うことで、スリランカ地域の在来品種(約150品種)が保有するトビイロウンカ抵抗性遺伝子座を網羅的に推定する。農業生物資源ジーンバンクからスリランカ原産の150品種を取り寄せて、トビイロウンカ抵抗性の評価に必要な種子を増殖した。 (2)として、既報の5つの抵抗性遺伝子に関して、3000品種のSNPデータベース上において、対立遺伝子の種類に関して情報を取りまとめた。抵抗性遺伝子と同様の配列を持つ品種は、それぞれの抵抗性遺伝子において、1-2%程度の品種だけであった。これらの対立遺伝子間には、アミノ酸置換に関わるSNPが多くみられた。 (3)として、PTB33由来のbph2+Bph3-PYLと、Rathu Heenati由来のBph3+17-PYLを各集団から固定系統を選抜した。対象の領域近傍に設定されたDNAマーカーにより抵抗性遺伝子の存在を確認した。これらの集積系統の種子増殖ができたので、供与親であるPTB33とRathu Heenatiへの交雑へ利用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は以下の3小課題で構成されており、「おおむね順調に進展している。」とした理由は以下の通りである。 (1)として、異なる地域・国由来のトビイロウンカ集団をもちいて、ゲノムワイド関連解析を行うことで、スリランカ地域の在来品種(約150品種)が保有するトビイロウンカ抵抗性遺伝子座を網羅的に推定する。農業生物資源ジーンバンクからスリランカ原産の150品種を取り寄せて、トビイロウンカ抵抗性の評価に必要な種子を増殖した。これらの品種の中には、感光性が非常に強い品種があり、短日条件下において栽培を行い、抵抗性評価に用いる種子が十分に増殖できたことが理由である。 (2)として、既報の5つの抵抗性遺伝子に関して、3000品種のSNPデータベース上において、対立遺伝子の種類に関して情報を取りまとめ、抵抗性遺伝子はかなり特殊な品種群のみが保有することを明らかとした。これらの抵抗性品種が保有する対立遺伝子を判別するマーカーの作出を行う情報を得ることができたためである。 (3)として、PTB33由来のbph2+Bph3-PYLと、Rathu Heenati由来のBph3+17-PYLを各集団から固定系統が得られた。これらの集積系統の種子増殖ができたので、今後、供与親であるPTB33とRathu Heenatiへの交雑することができるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)の研究として、異なる地域・国由来のトビイロウンカ集団をもちいて、ゲノムワイド関連解析を行うことで、スリランカ地域の在来品種(約150品種)が保有するトビイロウンカ抵抗性遺伝子座を網羅的に推定する。150品種からDNAを抽出し、集団の構成について解析を行う。その後、Rad-seqにより遺伝子型を調査し、SNPの遺伝子型情報を習得する。その後、1966年に日本で収集されたトビイロウンカ集団を用いて抵抗性の評価を行う。 (2)の研究として、既報の単離されたトビイロウンカ抵抗性遺伝子に関して、3000品種の塩基配列比較を行うことで、対立遺伝子間の差異を推定している。これらの既報の抵抗性遺伝子を判別するDNAマーカーの作出を目指す。作出したDNAマーカーの効果を検証するため、スリランカ地域の在来品種を用いて、各品種がどのような対立遺伝子を保有しているかを網羅的に解析する。 (3)の研究として、分離集団を用いた遺伝解析により、広域的な抵抗性品種(PTB33、Rathu Heenati)が保有する遺伝要因を解明する。PTB33由来の集積系統 (bph2とBph3を保有)とPTB33の交雑とRathu Heenati由来の集積系統(Bph3とBph17を保有)とRathu Heenatiの交雑を行い、F1植物体を育成する。
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Causes of Carryover |
スリランカ地域の在来品種の種子増殖を最優先に、研究を進めたため、表現型調査に関する実験が実施できかなった。それらの実験に必要なプラスチック製品や消耗品を購入しなかったため、次年度の使用額が生じた。
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