園芸作物における熱ショック誘導抵抗性の機作解明

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K07637
• Research Institution: Ibaraki University
• Principal Investigator: 佐藤 達雄 茨城大学, 農学部, 教授 (20451669)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: 熱ショック / 熱ショック転写因子 / 代替経路

Outline of Annual Research Achievements

材料にトマトを用い、熱ショック処理後の細菌性病害に対する抵抗性の変化、葉中サリチル酸含量の変化ならびに病害抵抗性関連遺伝子の発現経過を調査した。その結果、トマトの病害抵抗性は熱ショック処理後12時間後に最大となり、その後低下することが明らかになった。一方、葉中サリチル酸濃度は熱ショック処理後１２時間でピークに達し時間とともに減少した。病害抵抗性関連遺伝子の発現経過については、供試した遺伝子はいずれも熱ショック処理後１２時間または２４時間後にピークに達した。一方、熱ショック転写因子についてはいずれも熱ショック処理後６時間程度で発現がピークに達したが、その後は遺伝子によって発現レベルが維持されるもの、漸減するものがあった。これら遺伝子の開始コドン上流域のシーケンシングを行ったところ、すべての遺伝子で熱ショックエレメントの存在が確認された。 以上の結果から、葉中サリチル濃度がピークに達するタイミングは熱ショック転写因子の発現レベルよりも６時間遅かった。これらの結果に基づいて、これら病害抵抗性遺伝子の発現はサリチル酸により全身獲得抵抗性が誘導されるよりも早い時期に熱ショック転写因子によって誘導される可能性が高いと判断された。当初の仮説のとおり熱ショックによって前進獲得抵抗性が発現されることは葉中サリチル酸濃度の上昇から明らかであるが、それに加えて熱ショック蛋白質や熱ショック転写因子によって介在される代替経路があることが示唆された。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

初年度についてはこれまでの仮説を証明するための実験を行ってきた。実験は研究開始当初の計画どおりに進んでおり、得られた結果は想定内のものである。

Strategy for Future Research Activity

これまでのところ研究は当初の想定どおりに進んでいることから、次年度については当初計画に基づき、遺伝子発現レベルやサリチル酸含量が周期的に上下する理由を考察するためHSP阻害剤やHSF阻害剤を使用して、その影響を検討する予定である。

Causes of Carryover

実験が順調かつ効率的に進行したため予定より実験実施回数が少なかった。また、人件費・謝金を使用する必要が生じなかった。一方で新規性がある結果が得られたため成果の公表を見合わせた。次年度は高価な阻害剤を大量に使用することと論文等の成果発表を予定しているため、これに充当する予定である。