2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the Mechanisms of Heat Shock-Induced Resistance in Horticultural Crops
Project/Area Number |
17K07637
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 達雄 茨城大学, 農学部, 教授 (20451669)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱ショック / 熱ショック転写因子 / 紫外線 / UV-B / 熱ショック誘導抵抗性 / 糸状菌病害 / 局所抵抗性 / 全身獲得抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度予定したイチゴに対する熱ショック処理の実験はコロナウイルス感染症の影響による栽培施設運営上の問題から実施できなかった。これに代わり熱ショック誘導抵抗性(HSIR)は熱ショックのみをトリガーとして生起する反応であるのか、非生物学的ストレスに対する普遍的な反応であるのかを明らかにするため紫外線(UV-B)照射による抵抗性誘導反応との比較をキュウリとうどんこ病を用いた実験系で行った。キュウリ幼苗に対しUV-B照射(強度5μW/cm2)を4時間/日行った後にうどんこ病菌を接種したところ、うどんこ病の発生が対照群に比べ21.17%減少した。温湯浸漬による熱ショック処理とは異なり、UV-B照射ではキュウリの病害抵抗性関連遺伝子Chi2およびETR2が照射部位にのみ局所的に発現し、全身的な反応は現れなかった。うどんこ病菌を接種したキュウリでは、事前のUV-B照射の有無でChi2、ETR2、LOX6の発現量が異なった。UV-Bは、熱ショック処理により誘導される全身獲得抵抗性や熱ショック転写因子遺伝子の発現に大きな影響を与えなかった。熱ショック処理とUV-B照射の併用はうどんこ病の減少に強い相乗効果を示した。この結果から、UV-B照射は熱ショック処理とは異なるメカニズムでキュウリのうどんこ病に対する抵抗性を引き起こす可能性が高いことがわかった。したがって全ての環境ストレスがHSIRを誘導する訳ではないことが示された。 研究期間全体を通し、当初目標に掲げた熱ショック誘導抵抗性の複数の反応経路のうちの未解明の経路が熱ショック転写因子によるものであることが明らかになった。また実用化されている類似手法である紫外線照射はメカニズムが異なることが分かった。このため育苗施設等では複数技術を併用することによりさらに高い病害予防効果を期待できると考えられる。
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