2017 Fiscal Year Research-status Report
病院勤務者のストレス緩和を目的とした「新しい病院緑化」の提案と効果検証
Project/Area Number |
17K07638
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岩崎 寛 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (70316040)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 園芸療法 / 病院緑化 / ストレス / 病院勤務者 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、1.病院緑化の現状を把握するための基礎調査、2.新しい病院緑化の提案と施工、3.病院勤務者向け園芸療法プログラムの提案の大きく3つを予定していた。初年度の研究実績としては、これら3つの調査は基本的に全て実施できた。 1では、関東圏における病床数200床以上の大型病院に対して質問紙調査を実施し、緑化の現状や患者、職員の緑に対する意識の把握を行った。その結果、患者は季節感を求めているが、職員は癒やしを求めていることなどがあきらかになった。 2では、実際に病院敷地内における施工や調査は実施できなかったが、看護学部のキャンパス内に花壇を作り、看護学生を対象にした園芸プログラムの実施を行った。また園芸キャンパス内に足腰に負担が少ないウレタン入りの芝生を施工し、その利用による印象評価実験等を実施した。その結果、ウレタン混入割合が高い方が、寝転ぶや座ると言った利用行動において癒やし効果が高いことなどが明らかになった。初年度は、このような実際の医療福祉施設への緑化導入に向けた材料の検討ができた。 3では、実際の看護師や保健師を対象に園芸療法プログラムを実施し、その効果についてのアンケート調査を実施した。その結果、皆園芸療法によって、ストレスが緩和されたが、それだけでなく、実際に関わっている患者や高齢者にも、自分が体験したプログラムを提供したいと言った意見も多く見られた。これらの結果から、看護師に対する園芸療法プログラムは自身の心身の健康だけで無く、自分が関わっている患者に対しても影響を及ぼす可能性が考えられ、患者への間接的ケアとしても有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画はほぼ全て実施できたことから、概ね順調に進展していると言える。 1の病院の現状把握のためのアンケートに関しては、集計は本年度で終了し、傾向は見られたが、さらに各病院へのヒアリング調査を行うことで、より深く考察できると考えられるため、次年度の計画に組み込む予定である。 2の病院敷地内への施工に関しては、当初の計画では精神科病院で実施する予定であったが、計画が変更となったため、急遽、看護学部キャンパス内での花壇施工に変更し、その花壇の管理を中心とした園芸プログラムの実施を行うこととした。また、緑化材料の検討として、ウレタン樹脂混入芝生をとりあげ、足腰への負担軽減、心理的効果に関する調査を実施した。秋に実施し、一定の成果は得られたが、屋外での利用であるため気温などの影響が大きいことから、次年度以降もデータを蓄積する必要がある。 3の園芸プログラムに関しては看護師や保健師に対して実際に実施できたが、被験者が当初想定していた人数よりも少なかったことから、次年度以降も継続して実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は1年目の反省点を踏まえ、アンケート調査の結果を元にヒアリング調査を実施する。さらに当初からの予定である以下の2つをメインに研究を進める。 1.病院勤務者への園芸療法プログラムの提案・実践・検証の継続:特に園芸療法の特徴である植物の連続性(芽生え、開花、結実)を体感できる長期植栽プログラム(播種、管理、収穫)と、屋内で簡易に実施可能な短期園芸クラフトプログラムの2タイプを実施し、プログラム実施による感情の変化を把握するために実施前後にPOMS(Profile of Mood Status)の測定と、不安特性の傾向が把握できるSTAIの測定を行う。 さらに病院勤務者の園芸活動中の発話や行動を記録し、そのデータをSPSSのテキストマイニング法によって分析し、共起ネットワーク等を用いて整理することで、各プログラムの特徴や有用性の検証を行う予定である。 2.次世代への体験的教育プログラムの提案:医療系学生への体験的教育プログラムを提案・実践し、その効果検証を行う。具体的には医療系大学のキャンパス内に、学生と共に花壇を施工・管理し、土や植物に触れる機会を提供する。その効果検証としては、作業前後での質問紙調査に加え、POMS等の心理調査も実施する。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた実際の病院における花壇の施工が翌年以降になったため、施工にかかる人件費、物品費を初年度に使うこと無く、次年度に繰り越すこととなった。 また、初年度予定していたオンラインアンケートを実施する前に、予備調査として郵送式のアンケートを実施する方が効果的であるために、オンラインアンケートにかかる予算を次年度に繰り越すことになった。これらが次年度使用額が生じた理由である。初年度に実施できなかったこれらの項目は次年度に実施可能であることから、繰り越して使用する予定である。
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Research Products
(4 results)