2017 Fiscal Year Research-status Report
A pilot study on the effects of memory improvement by Chrysanthemum and Bamboo scent in healthy subjects and dementia patients.
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17K07646
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
五島 聖子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (80745216)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 菊の香気成分 / 竹の香気成分 / 酢酸ボルニル / ユーカリプトル / 記憶誘発効果 / 菊の香気成分の多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、菊と竹の香気成分の認知症患者に対する長期使用による心理的作用を明らかにすることである。一年目(H29年度)の研究実施計画は、菊の香りの主成分と考えられるbornyl acetateとeucalyptol、竹の香りの主成分であるcis-3-hexenol とcis-3-hexenalの記憶誘発効果をアメリカと日本の健常者を対象に測ることであった。 本年はこの実施計画に基づきアメリカにおいてラトガーズ大学のアメリカ人学生と日本において長崎大学の日本人学生を対象に実験を行った。その結果、eucalyptolによる記憶誘発効果に有意差を確認した一方で、bornyl acetate、cis-3-hexenol とcis-3-hexenalからは効果が見られないことを確認した。また、被験者を対象とした実験に先立って小菊から放出される香り成分を固相マイクロ抽出(SPME)ファイバーで捕集し、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)で分析したところ、香気成分が菊の種類によって全く異なることが明らかになった。つまり、研究当初は菊の香気の主要成分はbornyl acetateとeucalyptolと考えたが、これは申請者がアメリカで造成した庭園に使用したアメリカで流通している小菊の香り主成分であった。一方、申請者が日本で造成した庭園に使用した小菊の香りの成分はSafranalであり、これにはβ-Thujeneやα-Pinene、β-Myrceneといったモノテルペン類も検出されたが、bornyl acetateとeucalyptolは全く検出されなかった。 今年度の研究の意義は、eucalyptolによる記憶誘発効果を健常者の被験者を対象として確認したとともに、菊の香り成分の多様性について調査し、記憶誘発効果を期待できる菊の種類を限定することができたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のH29年度の研究計画目的は菊と竹の精油による記憶誘発効果と、混合油による記憶誘発効果であった。本年度は当初の研究実施計画に基づき、ラトガーズ大学における研究協力者と密接な連携を取りながら、アメリカと日本において計画通り実験を実施することができた。実験の結果、記憶誘発効果を期待していた菊と竹の香気成分の中で、菊の香気成分と考えられるユーカリプトルのみから有意な記憶誘発効果を確認した。また、精油による記憶誘発効果を調査する過程で、精油の成分を分析したところ、菊は多くの植物と異なり、品種によって香気成分が全く異なることが明らかとなった。つまり、本年の研究により記憶誘発効果が期待できるのは竹ではなく菊の香気成分であること、さらに、菊は種類によって成分が異なるので精油の成分を限定することができないことが明らかとなった。一連の実験結果は、研究計画時の予想とはかなり異なるものであったが、菊と竹の香気成分とそれらの記憶誘発効果について明らかにするという当初の目的は達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に提案した2年目の研究計画は、H29年度の実験で効果的と限定された菊と竹の香りについて、その長期的な効果を軽度認知症患者に対して計測することである。しかしH29年度の実験により、記憶誘発効果が期待されるのは竹の香気成分ではなく、菊の香気成分中のユーカリプトルであること、しかし菊の香気成分は品種によって異なるためユーカリプトルは全ての菊に含まれているわけではないことが判明した。この結果に基づき、今年度の研究は、研究対象を菊の香気成分とするのでなく、ユーカリプトルに限定するとし、その長期的使用による軽度認知症患者に対する効果を検討する。実験の手順や方法は、申請時の研究計画に基づいて進めるが、一年目の実験で被験者数の確保が困難であったことを踏まえ、十分な被験者数を確保するために、当初予定していた浜野病院に加えてのぞみの杜介護施設(長崎県西彼杵郡長与町吉無田郷1578番地 http://www.nozominomori.or.jp)の入居者も対象に実験を行う。
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Causes of Carryover |
理由:ワークショップの対象である協会との日程調整が難航したため、平成29年度に開催予定であったワークショップを開催することができなかった。
使用計画:当該ワークショップを平成30年4月に繰り越して開催する。
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Research Products
(2 results)