2018 Fiscal Year Research-status Report
マンゴー品種間における花成制御機構の違いとその要因解析
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17K07652
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
神崎 真哉 近畿大学, 農学部, 准教授 (20330243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高居 恵愛 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70589770)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 花成誘導 / 低温遭遇 / FT遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.冬期の気温が低温要求性品種と非要求性品種の花成に及ぼす影響:前年度に引き続き、石川県立大学温室にて2018年11月から低温区(10~20℃)と高温区(20℃以上)を設け‘Irwin’(低温要求性品種)と‘Nam Doc Mai’(非低温要求性品種)を栽培した。2019年4月時点での花芽形成枝率は低温区の‘Irwin’で100%だったのに対し,‘Nam Doc Mai’では19%と昨年度より低くなった。一方、高温区においては、昨年と同様に‘Irwin’5個体中2個体で花成が誘導された(花芽形成枝率7%)のに対し、‘Nam Doc Mai’では花成誘導はみられなかった。これらのことから‘Irwin’において最低気温20℃は花成を完全に抑制する条件ではないこと、‘Nam Doc Mai’では気温よりも樹体の成長リズムが花成に影響することが示唆された。なお、昨年度、春季に開花しなかった‘Nam Doc Mai’高温区の個体は夏季に開花が確認されたことから,本年度は夏季開花に向けてサンプリングを継続することとした。 2.トランスクリプトーム解析:2017年度に石川県立大学にてサンプリングした‘Irwin’について低温遭遇前・後および低温区・高温区間での遺伝子発現についてトランスクリプトーム解析を行い、遺伝子発現量の変化を網羅的に解析している。その結果、MiFTは低温遭遇によって増加する遺伝子のうち、最も変化量の大きい遺伝子であることが示された。処理区間および低温遭遇前後で変化量が大きいその他の遺伝子に関して現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに非低温要求性品種においても、花成誘導時にはMiFTの発現が上昇することが明らかになっており、低温要求性品種とはMiFT遺伝子の発現制御機構が異なることが示されている。また、最低気温が20℃の条件では‘Irwin'の花成は完全には抑制されないことが明らかとなった。一方、‘Nam Doc Mai’の開花は気温より樹の成長リズムが花成と関連することが示唆されている。さらに、トランスクリプトーム解析にも着手し、発現量に差のある遺伝子の解析を行っている。春季に開花しなかった非低温要求性品種が夏季に開花することも明らかとなり、今年度の研究計画に取り入れることができた。MiFT遺伝子のプロモーター領域の解析は進めることができなかったが、全体的に見れば研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.トランスクリプトーム解析:現在、低温遭遇前後で発現量に差異のある遺伝子の絞り込みを進めている。これまでの研究で、GA処理や着果負荷が強かった‘Irwin’樹では低温遭遇してもMiFT発現量が増加せず花成も抑制されることが明らかとなっているが、トランスクリプトーム解析により選抜した遺伝子について、そのような花成抑制条件下での発現解析を行うことで、花成を抑制する条件について考察する。 2.非低温要求性品種の夏季開花:夏季に開花する品種について、植物ホルモン処理やせん定時期の異なる処理区を設け、花成との関係を明らかにする予定である。同時に、関連遺伝子の発現解析も行う。 3.MiFTのプロモーター領域の解析:品種によってMiFTの発現制御機構に差異があることが明らかとなったので、プロモーター領域を各品種から単離し、配列を比較する。
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