2018 Fiscal Year Research-status Report
リンゴの超早期開花を非形質転換で誘導する為の相転換機構の解明
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17K07653
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Research Institution | Fukushima Agricultural Technology Centre |
Principal Investigator |
岡田 初彦 福島県農業総合センター, 果樹研究所, 主任研究員 (50504081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 貞男 岩手大学, 農学部, 教授 (00333758)
渡邉 学 岩手大学, 農学部, 助教 (00361048)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リンゴ / 早期開花 / 相転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、育苗時の実生の生育を促進する好適な耕種的条件を明らかにし、実生の早期開花を可能にする育苗体系の構築を目的として、以下のような試験を実施した。 24時間日長の加温ハウス内で、M.hupehensisの無配偶生殖種子を播種し、生育に応じて移植を行いながらポリポット育苗を実施した。培土はタキイ育苗培土を使用。元肥には緩行性被覆肥料シグモイド型100日タイプまたは通常の化成肥料を用い、対照として無施用区を設けた。追肥は液体肥料(N6%、P10%、K5%)500倍毎週施用、液体肥料250倍2週間に1回施用の2区とし、さらに液体肥料500倍毎週施用+尿素500倍葉面散布4回/週散布区を設けた。対照は追肥無しとした。さらに生育を促進させる水耕栽培の条件も検討した。 前年度のM.hupehensis実生苗の生育は、播種から約6ヶ月後ほぼ停止したが、本年度はハウスから屋外に出すまで7ヶ月以上伸長が続き停止することは無かった。水耕栽培ではハイポニカ333倍希釈で最も生育が優れ、樹高は約220cmであった。追肥がM.hupehensis 実生苗の生育に及ぼす影響は、液体肥料の濃度、葉面散布の有無による差は無く、いずれも対照区より生育が促進された。追肥施用により、9月までに目標とする樹高250cmは確保出来たが4℃低温処理後、加温ハウスにで発芽させた結果、花芽の分化は確認出来なかった。本研究で育苗した実生苗の葉は、通常育苗の苗に比べ明らかに大きく、窒素過多により相転換後も花芽の分化が抑制されていると推測される。 さらに、岩手大学ではM. hupehensisの試験とは別に2012年11月から2013年1月に播種し、2013年12月5日に圃場に定植したリンゴ栽培品種の交雑実生の樹高、地上30cm幹周および開花調査を2019年5月17日に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M.hupehensis実生苗は前年のように播種から約6ヶ月で伸長生長を停止することなく、ハウス内では継続的に伸長を続けた。これは、岩手大学寒冷フィールドサイエンス教育研究センターにおける水耕試験でも同様の結果となっており、最低気温を高く設定して室温が前年より安定したことや光強度を強くした効果によると推測される。また、播種時期別に生育を比べると、播種時期が遅くなるほど生育は抑制されるが、少なくとも1月上旬に播種し、液肥を定期的に施用することにより、9月までに目標とする樹高250cmを確保することが出来るようになった。しかしながら、低温処理後加温ハウスに移して再発芽させた苗は開花にはいたっておらず、相転換を確認する為に引き続き開花を誘導する手法の検討が必要である。 一方、平成29年4月に播種して生育促進処理を実施し、未開花だった実生苗を1年間無肥料で栽培したところ、本年4月に2樹で開花が確認された。岩手大学でも同様に2年生苗1樹の開花が確認されており、実生苗を播種からほぼ2年で開花させることは可能になりつつある。福島果樹研での開花個体の樹高は約300cm、岩手大学では192cmと試験場所により樹高に差が出る結果となった。福島果樹研の開花部位は先端直下の腋芽、岩手大学では地上162cmの位置から発出した15cmの副梢の頂芽で、開花には樹高および幹周以外にも樹齢、枝の形状等が影響することが推察された。 リンゴ交雑実生の生育調査では各交雑組合せ実生の播種後6年半時点で開花率は、ふじopenが28.6%、紅玉×ふじ 20.5%、王林×紅玉 15.4%、王林×さんさ 20.0%、王林SD 0%であり、交雑実生の初開花の早晩性には交雑組合せが影響することが推定された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29から30年度に得られた結果を基にして、 (1)早期開花が可能な育苗体系の構築(岡田、渡邉):前年から継続した実験を続けるとともに、播種時期、追肥条件等を変えて相転換への影響を確認する。特に平成29年度に生育促進処理を施した実生苗は1部が播種から2年で開花に至ったことから、相転換は播種から2年以内で可能と考えられ、目標とする樹体生長量を確保した後、スコアリングや矮性台木への緑枝接など、花芽の分化および充実を促進できる処理法を探索し、早期開花が可能な育苗体系を検討する。 (2)正確な相転換時期の把握(小森、岡田):引続き前年同様の分析を続けて年次間差の影響を把握するとともに、花成刺激に反応できる限界の基本栄養生長量を把握する。無処理による最小の基本栄養生長量を把握できた場合、7月以降に基本栄養生長量前後の成長量に達し新梢伸長が停止している個体を用いて、誘引、リンギング、植物成長調節剤散布等の処理を行い、相転換を誘発するために必要な正確な成長量を把握する。また、栽培品種の早期開花性の遺伝解析を行う。 (3)相転換時の植物ホルモンの動態の解析(渡邉):水耕栽培で育苗した個体を花芽誘導するため、土耕に移して圃場で管理する。その後、低温処理を実施後再び恒温室に戻し、開花誘導を試みる。また、新たにM.hupehensisの種子を播種し、恒温室で水耕栽培する。経時的に新梢および根の植物ホルモンを測定し、新梢の伸長および停止に関わる地上部(新梢)および地下部(根)の植物ホルモンバランスを解明する。その結果から、植物ホルモンの散布処理により期間、伸長を継続させる方法を検討する。
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Causes of Carryover |
旅費の支出が無く、また資材代が予定より少なくすんだ。次年度は研究の効率化のため岩手大学で実験補助者を雇用する予定である。
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