2018 Fiscal Year Research-status Report
花粉伝染を制御する植物ウイルスのホールマーク遺伝子の解明
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17K07664
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
磯貝 雅道 岩手大学, 農学部, 准教授 (30312515)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 花粉伝染 / ラズベリー黄化ウイルス / 植物ウイルス / 花粉による水平伝染 / 花粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのラズベリー黄化ウイルス(raspberry bushy dwarf virus, RBDV)の花粉伝染解析から、RBDVに感染した花粉が、柱頭に受粉されると、ウイルスを蓄積した花粉管が柱頭へと侵入、花粉管からウイルスが排出されることで、柱頭部にinfection fociが形成され、植物体本体へとウイルスが全身感染すると考えられた。さらに、1b遺伝子の翻訳を停止させたRBDV変異体(RBΔ1b)は、RBDV野生株(wtRBDV)と比較して、花粉による水平伝染効率が低下することを見出した。そこで、wtRBDVとRBΔ1bを用いて、ウイルス感染花粉のウイルス蓄積量、花粉管からのウイルス排出量、植物体本体への感染を導く柱頭部でのウイルス感染率について比較した。その結果、wtRBDVと比較して,RBΔ1bは,花粉のウイルス蓄積量、花粉管からのウイルス排出量、柱頭部でのウイルス感染率が低下していた。さらに、1b遺伝子を発現する形質転換Nicotiana benthamiana (1b遺伝子発現植物)を用いて、RBΔ1bの花粉による水平伝染について解析した。RBΔ1bに感染した1b遺伝子発現植物由来の花粉を健全植物に授粉すると、RBΔ1bに感染した非形質転換植物由来の花粉の授粉と比較して、花粉による水平伝染率が上昇した。そして、RBΔ1bに感染した1b遺伝子発現植物由来の花粉のウイルス蓄積量を解析すると、ウイルス蓄積量が増加しており、花粉管からのウイルス排出量も増加していることが示唆された。これらのことから、1b遺伝子により、花粉がRBDVの効率的なベクターに改変されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度、本研究を「おおむね順調に進展している。」と評価した。そして昨年度(2018年度)は、以下の4点について明らかにすることができた。 1. 1b遺伝子によりRBDVの花粉による水平伝染効率が上昇する。2. 1b遺伝子が、感染花粉のウイルス蓄積量を増加させることを示唆した。3. 1b遺伝子が、花粉管からのウイルス排出量を増加させることを示唆した。4. 1b遺伝子が、植物体本体への感染を導く柱頭部でのウイルス感染率を上昇させることを示唆した。 これらのことから、現在までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している。」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も計画通りに研究を推進していく。具体的には、異種ウイルス間の花粉伝染機構の共通性・普遍性の解析を進める。RBDV (イダエオウイルス属; 科未設定)と分類学的に異なるウイルス種を供試して、これまで明らかにしたRBDV の花粉伝染機構と比較解析する。供試ウイルスとして、ブルーベリー小球形潜在ウイルス(blueberry latent spherical virus, BLSV; セコウイルス科ネポウイルス属)を用いる。ネポウイルス属には、花粉伝染するウイルス種が多く所属し、経済的に重要な病原ウイルスを含んでいる。しかし、ネポウイルス属の花粉伝染メカニズムは解析されていない。RBDVとBLSVの解析から、これらウイルスの花粉伝染メカニズムを比較する。
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Research Products
(14 results)