2017 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソームのβ酸化系を介したサリチル酸合成経路の構成因子とその転写制御機構
Project/Area Number |
17K07665
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
加藤 新平 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (10533614)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 病害抵抗性 / サリチル酸 / 生合成 / ペルオキシソーム / β酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タバコにおけるサリチル酸 (SA) 合成経路とその制御機構を明らかにするため、以下の2つの小課題を実施した。 <1. ペルオキシソームのβ酸化系を介したSA合成経路の構成因子> 小課題1の目的は、これまでの我々の研究により同定されたSA合成経路の候補遺伝子 (CL、CHD、KAT、2OGD、HCT、HSR201、HSR203J等) が実際にSAの合成に関与するかどうかを明らかにすることである。そのため、候補遺伝子の過剰発現および発現抑制がSA合成に及ぼす影響を調べた。過剰発現によりSA蓄積量を増加させることが既に明らかになっているCLと他の候補遺伝子を一緒に一過的に過剰発現させたところ、HSR201の共発現がSA蓄積量をさらに増加させることが明らかになった。HSR201単独の過剰発現では効果が認められないことから、HSR201はCLの下流で働くと考えられた。作製済みの2OGDのRNAi形質転換体より、2OGDの発現が顕著に抑制された系統を選抜した。選抜した系統にタバコモザイクウイルスを接種しSAの蓄積を誘導したところ、複数の個体でSA蓄積量の低下が認められた。しかしながら、SA蓄積量と2OGD発現量の間に相関がない個体も存在した。
<2. CBP60型転写因子・NtCBP60によるSA合成の制御機構> 小課題2の目的は、NtCBP60がSA合成を活性化する機構を明らかにすることである。NtCBP60がHSR203Jのプロモーターを活性化することが既に明らかになっている。そこで、HSR203Jプロモーターを5’側から順次欠失させたクローンを作製し、NtCBP60による転写活性化に必要な最小領域を探索した。その結果、HSR203Jプロモーター中の25塩基がNtCBP60による活性化に必要であることが明らかになった。また、この25塩基の領域に5塩基ずつの変異を導入し、2ヶ所の変異がNtCBP60によるプロモーターの活性化を低下させることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小課題1では、一過的過剰発現により、CLとHSR201がSA合成に関与することを明らかにすることができた。これまでの我々の研究より、両タンパク質はペルオキソームに局在することが明らかになっており、タバコにおけるSA合成の少なくとも一部がペルオキシソーム内で行われることが更に強く示唆された。また、2OGDのRNAi発現抑制体の結果より、2OGDもSA合成に関与する可能性が示唆された。しかしながら、SA蓄積量と2OGD発現量の間に相関が認められない個体も複数存在したことから、2OGDのSA合成への関与については更なる解析が必要である。
小課題2では、HSR203Jプロモーター上に存在するNtCBP60による活性化に必要な領域を5塩基単位で明らかにすることができた。現在、この領域にNtCBP60が直接結合するかどうかを解析している。この領域にNtCBP60が直接結合する場合、この領域の配列を基に他のNtCBP60により制御される遺伝子を同定することが可能である。 以上のことを総合し、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
タバコにおけるサリチル酸 (SA) 合成経路とその制御機構を明らかにするため、平成30年度以降は以下のように研究を推進する。 <1. ペルオキシソームのβ酸化系を介したSA合成経路の構成因子> 我々が同定したSA合成経路の候補遺伝子 (CL、CHD、KAT、2OGD、HCT、HSR201、HSR203J等) が実際にSAの合成に関与するかどうかを明らかにする。これまでの研究で過剰発現による機能獲得実験は概ね終了したため、30年度以降は発現抑制による機能喪失実験を主に行う。すでに発現抑制体の選抜が終了している2OGDについては、解析数を増やすことにより2OGDの発現低下によりSA蓄積量が減少するかどうかを明らかにする。他の候補遺伝子については、RNAi法を用いて発現抑制タバコを作製すると共に、ベンサミアナタバコを用いて簡易かつ迅速な発現抑制法であるVIGS (virus-induced gene silencing) を行う。そのため、ベンサミアナタバコにおける候補遺伝子のホモログをクローニングすると共にVIGSの条件検討を行う。
<2. CBP60型転写因子・NtCBP60によるSA合成の制御機構> 同定したHSR203Jプロモーター中の25塩基にNtCBP60が直接結合するかどうかを明らかにする。そのため、NtCBP60の組換えタンパク質を大腸菌で作製し、NtCBP60の組換えタンパク質がHSR203Jプロモーター中の25塩基に相当するオリゴDNAに結合するかどうかをゲルシフト解析により明らかにする。結合が認められた場合は、カルモジュリンがNtCBP60とオリゴDNAの結合におよぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Establishment of the plant-microbe interaction research in Marchantia polymorpha2018
Author(s)
Hidekazu Iwakawa, Izumi Yotsui, Hidenori Matsui, Yuko Nomura, Katharina Kramer, Anne Harzen, Takehiko Kanazawa, Ryuichi Nishihama, Shinpei Katou, Takashi Ueda, Takayuki Kohchi, Hirofumi Nakagami
Organizer
第59回日本植物生理学会年会
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[Presentation] Establishment of the plant-microbe interaction research in Marchantia polymorpha2017
Author(s)
Hidekazu Iwakawa, Izumi Yotsui, Hidenori Matsui, Yuko Nomura, Katharina Kramer, Anne Harzen, Takehiko Kanazawa, Ryuichi Nishihama, Shinpei Katou, Takashi Ueda, Takayuki Kohchi, Hirofumi Nakagami
Organizer
The 65th NIBB Conference Renaissance of Marchantia polymorpha ‐the genome and beyond‐
Int'l Joint Research
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