2018 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソームのβ酸化系を介したサリチル酸合成経路の構成因子とその転写制御機構
Project/Area Number |
17K07665
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
加藤 新平 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (10533614)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 病害抵抗性 / サリチル酸 / 生合成 / ペルオキシソーム / β酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タバコにおけるサリチル酸 (SA) 合成経路とその制御機構を明らかにするため、以下の2つの小課題を実施した。 <1. ペルオキシソームのβ酸化系を介したSA合成経路の構成因子> 小課題1の目的は、これまでの我々の研究により同定されたSA合成経路の候補遺伝子 (CL、CHD、KAT、2OGD、HCT、HSR201、HSR203J等) が実際にSAの合成に関与するかどうかを明らかにすることである。そのため、候補遺伝子の過剰発現および発現抑制がSA合成に及ぼす影響を調べている。平成30年度は、候補遺伝子の機能解析を加速させるため、VIGSによる遺伝子の発現抑制が容易なベンサミアナタバコを実験に用いた。ベンサミアナタバコの候補遺伝子ホモログのcDNAをクローニングし、ウイルスベクターに挿入した。VIGSの条件を最適化した後、過剰発現によりSA蓄積量を増加させることが既に明らかになっているCLについて最初に解析した。その結果、CLのVIGSにより病原体ストレスに応答したSAの合成が顕著に低下することが明らかになった。
<2. CBP60型転写因子・NtCBP60によるSA合成の制御機構> 小課題2の目的は、NtCBP60がSA合成を活性化する機構を明らかにすることである。これまでに、1) NtCBP60がHSR203Jのプロモーターを活性化すること、2) HSR203Jプロモーター中の25塩基がNtCBP60による活性化に必要であることを明らかにしている。平成30年度は、この25塩基周辺の領域にNtCBP60が直接結合するかどうか、ゲルシフト解析を用いて検討した。NtCBP60の組換えタンパク質を大腸菌に発現させ、イオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィーで精製した。HSR203Jプロモーター中の25塩基とその周辺の塩基配列からなるオリゴDNAを合成しビオチンで標識した。両者を用いてゲルシフト解析を行ったが、現在まで結合を示すバンドのシフトは検出されていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小課題1では、過剰発現および発現抑制の両方の実験により、CLがSA合成に関与することを明らかにすることができた。これまでの我々の研究より、CLはペルオキソームに局在することが明らかになっており、タバコやベンサミアナタバコにおけるSA合成の少なくとも一部がペルオキシソーム内で行われることが更に強く示唆された。現在、他の候補遺伝子のベンサミアナホモログについても、VIGSによる発現抑制がSA合成に及ぼす影響を調べている。
小課題2では、HSR203Jプロモーター上に存在するNtCBP60による活性化に必要な領域に、NtCBP60が直接結合するかどうかゲルシフト解析を用いて検討した。これまでの所、結合は検出できていないが、NtCBP60の組換えタンパク質を精製することには成功しており、結合反応の条件を最適化したり、他のDNA配列を用いたりすることにより結合が検出できる条件を探索している。 以上のことを総合し、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
タバコにおけるサリチル酸 (SA) 合成経路とその制御機構を明らかにするため、2019年度以降は以下のように研究を推進する。 <1. ペルオキシソームのβ酸化系を介したSA合成経路の構成因子> 我々が同定したSA合成経路の候補遺伝子 (CL、CHD、KAT、2OGD、HCT、HSR201、HSR203J等) が実際にSAの合成に関与するかどうかを明らかにする。2019年度はVIGSによる遺伝子の発現抑制が容易なベンサミアナタバコを主に用いて、候補遺伝子ホモログの発現抑制により病原体ストレスにより誘導されるSA合成が減少するかどうかを明らかにする。SA合成に関与することが明らかになった遺伝子については、その組換えタンパク質を大腸菌などで作製し、SA合成のどの過程に関与するか明らかにする。
<2. CBP60型転写因子・NtCBP60によるSA合成の制御機構> 精製したNtCBP60の組換えタンパク質が、HSR203Jプロモーター中の25塩基とその周辺の塩基配列からなるオリゴDNAと結合する条件 (金属イオン、補酵素、温度など) を検討する。それでも結合が検出されない場合は、NtCBP60により活性化されることが明らかになっている他の遺伝子のプロモーター (KAT、HSR201など) を5’側から順次欠失させたクローンを作製し、NtCBP60による転写活性化に必要な最小領域を探索する。最小領域を同定できた場合は、その領域にNtCBP60の組換えタンパク質が結合するか調べる。
|
Research Products
(3 results)