2017 Fiscal Year Research-status Report
サツマイモネコブセンチュウ系統のエフェクター多型比較
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17K07672
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
浅水 恵理香 龍谷大学, 農学部, 准教授 (00370924)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物寄生性線虫 / サツマイモネコブセンチュウ / ゲノム多型 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
サツマイモネコブセンチュウは、世界中の作物圃場で大きな問題となっている植物寄生性線虫である。抵抗性品種の育成が進んでいるのは一部の主要作物に限られ、それらの作物においてさえ、抵抗性打破レースの出現がしばしば起こっている。本研究では、国内で単離されたサツマイモネコブセンチュウ50系統を用い、異なる感染形質を示すものを対象にトランスクリプトームデータを比較し、エフェクター候補遺伝子が有する多型の同定を行う。サツマイモネコブセンチュウは、サツマイモ5品種 (農林1号、農林2号、種子島紫7、エレガントサマー、ジェイレッド) に対する感染形質によってSPレースと呼ばれるグループに分類されている。本研究と並行して、50系統の表現型解析とSPレース分類が行われた。 平成29年度には、各系統のゲノムを解読し、一塩基多型から分子系統分類を行った。その結果、系統的に近縁で、感染形質の異なる系統の組み合わせを複数見出した。このようなペアのトランスクリプトームデータを比較することで、目的とする感染形質に関わる遺伝子を効率よく検出することが可能となる。このようなペアのゲノムを比較し、挿入欠失 (InDel) 部位を探索したところ、SPレース特異的な部位が存在することが分かった。その中には、農林2号に対する感染性の有無と連動する InDel 部位があった。今後は、それらの部位に座乗する遺伝子に着目しながらトランスクリプトームデータの比較を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画であった、サツマイモ品種に対して異なる感染形質を示すサツマイモネコブセンチュウ系統のトランスクリプトーム比較について、全ゲノムの多型情報を用いた系統分類と表現型解析を並行して実施し、比較解析の対象とする系統の組み合わせを絞り込むことができた。RNAサンプルの取得方法について予備実験を行い、無菌的に感染させ dual RNA-seq (宿主植物と寄生性線虫両者のデータを取る) を実施する方法を具体的に検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
サツマイモ品種に対して異なる感染形質を示すサツマイモネコブセンチュウ系統のトランスクリプトーム比較解析を行い、これまでに明らかになったゲノムの InDel 領域との対応関係を調べる。一連の比較解析によって、感染形質の違いを引き起こすサツマイモネコブセンチュウ遺伝子 (エフェクター) を明らかにする。 サツマイモ品種への感染表現型について、植物側の反応の詳細については知られていない。植物側の何が抵抗性あるいは感受性に関与しているのかを調べるため、詳細な表現型 (感染がどこまで進むのか、細胞死の有無など) を根を透明化するなど観察方法を工夫して明らかにしていく。 以上の研究を実施し、これまでに知らせていなかった「感染能力の違い」を生み出す機構について、遺伝子レベルの知見を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
前年度人件費を計上したが、他の資金から支出が可能となったため使用しなかった。今年度に繰り越された部分は、9月にベルギーで開催される国際学会 (European Society of Nematologists Conference 2018) への参加費用に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)