2017 Fiscal Year Research-status Report
低温ストレス応答に関与する機能性ペプチドの同定と機能解析
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17K07690
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中南 健太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40513403)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境ストレス応答・耐性 / 低温ストレス応答・耐性 / 機能性ペプチド / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
環境ストレスの一つである低温ストレスに対する植物の応答・適応メカニズムの理解は,農作物の生育範囲拡大や生長促進・収量増につながる重要な研究である.植物の低温ストレス応答の研究は盛んに行われているが,近年注目されている研究分野であるペプチドホルモン・機能性ペプチドに関する報告は未だない.本研究は,低温ストレス耐性及び,越冬後の生長再開に関与する新規機能性ペプチドを同定することを目的とする.さらに,同定したペプチドを人工合成し,添加試験によりペプチドの機能解析を行うものである.本研究は,機能性ペプチドの低温ストレス応答時の機能を解析するものであり,植物の低温ストレス応答だけでなく,生長や発達に関する新規機能性ペプチド・ペプチドホルモンの発見につながる研究である. これまでの研究で,カスタムマイクロアレイを用いた低温馴化または脱馴化で誘導性されるペプチドをコードする遺伝子の発現解析により,低温ストレス応答に関与する28個の新規な短い遺伝子の同定に成功した.これら遺伝子はその発現パターンにより低温馴化時に特異的に発現するものと,脱馴化時に特異的に発現するものに分けることができた.低温馴化時に発現するものは耐凍性獲得に関与する機能を有する可能性があり,脱馴化時に発現するものは生長再開に関与すると考えられる.今後はこれら候補遺伝子/ペプチドの詳細な発現解析や機能解析,特に人工合成したペプチドを添加することで耐凍性にどう影響を与えるかなどの解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温ストレス耐性及び,越冬後の生長再開に関与する新規機能性ペプチドを同定するために,平成29年度は,マイクロアレイによるペプチドをコードする遺伝子(sORF)の発現解析を行った.サンプルには,2週間生育したシロイヌナズナの未処理(NA, 22℃),低温馴化(CA)処理(2℃,1,7日),脱馴化(DA)処理(低温馴化処理後に22℃,6,24時間)したものを使用し,マイクロアレイはペプチドをコードするsORFを含むカスタムマイクロアレイを使用した.マイクロアレイの結果,28 の新規sORFがNAと比較して,CA1d, CA7d, DA6h, DA24hのいずれかの処理で4倍以上に発現が上昇すること明らかとなった.このうち18個はCA1dで,13個はCA7dで,3個はDA6h, 24hでそれぞれ発現が高くなっており(CA1d, CA7dの間で重複する遺伝子があった),CAで発現が高くなった遺伝子は低温ストレス耐性に,DAで発現が高くなった遺伝子は越冬後の生長再開に関与するものの候補として,今後の解析を進めることとした. さらに,CA1d, CA7dにおいて発現の高かったsORFのペプチドを2つずつ選抜し,ペプチドを人工合成した.それらの添加試験の結果,CA7dで発現の高かったペプチドを処理した植物では,NA条件でCOR15A, RD29A, KIN2などの低温誘導性遺伝子の発現が抑えられており,CA7dで誘導されるペプチドが低温ストレス応答のシグナル伝達に何らかの機能を有する可能性が示された.今後はこれらのペプチドの添加試験により,低温ストレス耐性に対する機能を明らかにする予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の平成30年度の研究計画では,マイクロアレイで見出された候補の過剰発現体・欠損変異体を作出し,耐凍性試験によるスクリーニングを行い,低温ストレス応答に関与する機能性ペプチドを同定する予定であった.しかし,最近の我々の機能性ペプチドの研究において,過剰発現体を用いたスクリーニングで見出されたsORFのうちの半数が,そのペプチドを人工合成し添加した場合に活性を示し(ストレス耐性を示す),半数は示さない結果となった.さらに,マイクロアレイで見出された候補sORFがそれほど多くなかったことから,今年度は,過剰発現体・欠損変異体を作出と並行して,人工合成したペプチドの添加試験による低温ストレス耐性,あるいは生長促進に関与する活性を示すペプチドのスクリーニングも同時に行うこととした. これまでの研究から,発現誘導が高いsORF及びペプチドが比較的ストレス耐性を示す傾向にあることがわかっているため,発現誘導の高いものから順にペプチド添加試験によるスクリーニングを行うこととする. また,過剰発現体・欠損変異体を用いたスクリーニングでは当初の予定通り,CA特異的遺伝子については過剰発現体を用い,耐凍性試験によりスクリーニングを行い,野生型植物と比較して耐凍性を示すものを同定する.DA特異的遺伝子については,欠損/抑制変異体を用い,野生型と比較して通常条件での生育が異常を示すもの,または,低温馴化,脱馴化過程における生育・発達が遅くなるまたは,異常を示すものをスクリーニングする予定である.
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Causes of Carryover |
まだ至っていない解析分の残額が生じたが,平成30年度初旬で使用する予定である. (使用計画) 過剰発現体・欠損変異体の作出に加えて,ペプチド人工合成を追加して試験を行う予定である.
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[Journal Article] AtPep3 is a hormone-like peptide that plays a role in the salinity stress tolerance of plants2018
Author(s)
Kentaro Nakaminami, Masanori Okamoto, Mieko Higuchi-Takeuchi, Takeshi Yoshizumi, Yube Yamaguchi, Yoichiro Fukao, Minami Shimizu, Chihiro Ohashi, Maho Tanaka, Minami Matsui, Kazuo Shinozaki, Motoaki Seki, and Kousuke Hanada
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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