2018 Fiscal Year Research-status Report
葉の窒素代謝ネットワークの転写後制御の解明とその応用
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17K07691
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高林 厚史 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (90546417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物の窒素代謝 / 窒素同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の窒素同化は無機態窒素を有機態窒素へと転換する一連の反応であり、地球の窒素循環の中でも重要な地位を占めている。GSとGOGATはその反応を担う重要な酵素であるが、まだその制御は十分には明らかにはなっていない。最近の研究から、ACR11は植物のグルタミン合成酵素(GS)とグルタミン酸合成酵素(GOGAT)の制御因子であり、葉緑体内のグルタミン濃度に応答して、それら酵素の活性を制御していることが明らかになってきた。その制御を明らかにするため、これまで精力的にacr11欠損変異株の解析が行われてきたが、まだその表現型には未解明な点が残されている。申請者は、acr11変異株の特徴的な遊離アミノ酸プロファイルを示すことに着目し、研究を進めている。今年度はacr11欠損変異株と複数の窒素代謝関連遺伝子の変異株との二重変異株を作成し、遊離アミノ酸プロファイルがどのように変化するかを調べることとした。その結果、acr11欠損変異株とアスパラギン合成酵素の変異株の二重変異株の解析から、acr11欠損変異株はGSの活性が弱いことが示唆された。この結果は、先行研究(Osanai et al. 2017)とよく一致するものである。一方で、グルタミン酸脱水素酵素やアスパラギン酸アミノ基転移酵素との二重変異株の遊離アミノ酸プロファイルはacr11欠損変異株の遊離アミノ酸プロファイルとほとんど変わらなかった。これらの結果は、acr11の特徴的な遊離アミノ酸プロファイルはこれら経路の活性化によるものではないことを示唆している。これまでの結果から、ACR11によるGS/GOGATサイクルの制御は、グルタミンやグルタミン酸のみならず、遊離アミノ酸プロファイルの調節に重要であることが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究室内で主要な遊離アミノ酸の信頼性の高い定量が可能になったこと、また多重変異株を作成したことで、1) 栽培条件の違いによる、また、2) 多重変異株における、遊離アミノ酸プロファイルの変化を高い精度で追いかけられるようになった。その結果、acr11欠損変異株における特徴的な遊離アミノ酸プロファイルに関する従来の仮説は成立しないこと、逆に言えば、これら結果を踏まえた新しい仮説が必要な局面であることが明らかになってきた。また、in planta の解析から、ACR11はおそらくホモダイマー、もしくはACR12とのヘテロダイマーで機能することを示唆するデータが得られた。これはACT domainを持つ他のタンパク質の先行研究とも矛盾しない。
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Strategy for Future Research Activity |
acr11株が特徴的な遊離アミノ酸プロファイルを示す理由を解析するため、単離葉緑体の遊離アミノ酸プロファイルを調べ、葉の遊離アミノ酸プロファイルと比較する予定である。また、様々な生育条件での遊離アミノ酸プロファイルも調べる予定である。これらの結果しだいで、現在の作業仮説の妥当性が明らかになるのではと期待している。
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Causes of Carryover |
昨年の地震(北海道胆振東部地震)の停電でフリーザーのサンプルが全て溶けて失われてしまったことにより、実験計画に少し遅れが出たため。
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Research Products
(4 results)