2017 Fiscal Year Research-status Report
土壌の生物性評価手法としての微生物起源揮発性有機化合物の網羅的解析法の適用
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17K07699
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
境 雅夫 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20225775)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 揮発性有機化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌微生物間には、多様な相互作用が存在しており、土壌管理などの違いによる環境条件の変化によって常に影響を受けている。したがって、この土壌微生物間の相互作用(ネットワーク)を理解し、そのネットワークの状況を的確に判断できれば土壌の生物性の評価につながることが期待される。近年、微生物の産生する揮発性有機化合物(VOCs)の多くは微生物間(さらに微生物と植物/動物間)に様々な作用を及ぼす情報化学物質(infochemicals)であるという知見が蓄積されてきている。そこで本研究では、土壌微生物由来のVOCsを網羅的に解析して土壌の生物性を評価するための解析方法の確立を目的とした。 土壌中に存在する微量な微生物由来VOCsを測定するため、大容量ヘッドスペース(LVSH)法の適用を検討した。採取した土壌試料をそのまま500mL容量の専用容器に入れ、土壌空気中に存在するVOCs成分をLVSH法によるGC-MSにて分析した。分析方法を最適化するため、ヘッドスペースガスの濃縮条件やGC-MS分析条件、土壌試料の量、土壌水分量の影響などを調べ、高感度で再現性の高い分析条件を検討した。その結果、ヘッドスペースガスの注入方法にはPulsed Vacuum Extraction 100ml×5回を用い、土壌試料の量は30g~50gとすることで、高い再現性でより多くのVOCs成分を検出することが可能となった。この方法を用いて様々な土壌のVOCsを測定した結果、平均して30種類のVOCs成分が検出され、そのVOCsの種類と存在比は土壌毎に異なっていた。すなわち、各土壌試料に異なるVOCsプロファイルが存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
土壌試料のVOCs測定の分析条件の最適化、特に土壌水分条件の影響の検討において時間を要したため、予定していた植物体を含む土壌試料の大容量ヘッドスペース(LVSH)法によるGC-MS解析条件の最適化が未達成であった。
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Strategy for Future Research Activity |
植物体を含む土壌試料のVOCsを大容量ヘッドスペース(LVSH)法を用いたGC-MS解析によって分析する手法の最適化を実施する。確立した土壌VOCs分析方法を用いて、様々な土壌(土壌の種類や土壌管理の異なる土壌)および植物体を含む土壌についてVOCsプロファイルを解析する。この時、解析に用いた土壌からDNAを直接抽出して次世代シークエンサー等による細菌のメタ16S解析(糸状菌はメタITS解析)を実施して、土壌の微生物フロラを解析する。これにより、土壌微生物の種構成と土壌VOCsプロファイルとの関係性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
土壌試料のVOCs測定の分析条件の最適化、特に土壌水分条件の影響の検討において時間を要したため、予定していた植物体を含む土壌試料の大容量ヘッドスペース(LVSH)法によるGC-MS解析条件の最適化に関する研究が実施できなかった。そこで30年度において、この植物体を含む土壌試料の分析手法の最適化実験を早急に実施し、確立した分析手法を用いて30年度計画の研究を予定通りに遂行する。
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Research Products
(1 results)