2017 Fiscal Year Research-status Report
コムギ・ダイズのカドミウム吸収におけるNramp5遺伝子の役割
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17K07703
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
石川 覚 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (40354005)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カドミウム / Nramp5 / ダイズ / コムギ / イネ / マンガン / 食の安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
コムギとダイズのカドミウム吸収におけるNramp5遺伝子の役割を明らかにするために、以下の成果を得た。 1)コムギとダイズの幼植物を数段階レベルのカドミウム(Cd)濃度を含む木村B水耕液で処理し、地上部と根部の重金属濃度の変化を調査した。また、比較対象にイネも同様の処理を行った。Cd処理濃度の上昇とともに、すべての作物で根部と地上部のCd濃度は上昇した。根のマンガン濃度はCd処理濃度の上昇とともにすべての作物で減少したが、地上部はコムギで若干減少し、ダイズはCd高濃度処理で増加した。一方イネはCd処理濃度の上昇に応じて減少した。亜鉛や鉄などの濃度はCd処理で若干変動するが、一定の傾向を示さなかった。根のマンガン濃度がCd処理で減少することから、コムギやダイズにおいてもイネ同様にマンガンの輸送体を経由してCdが取り込まれる可能性が示唆された。 2)ダイズ品種「エンレイ」からNramp5をクローニングしたところ、データベース上にある「williams82」と同じmRNA配列であった。4倍体のデュラムコムギと6倍体の普通コムギからNramp5をクローニングしたところ、1つのmRNA配列は共通であることがわかった。 3)イネのプロトプラストを用いて各Nramp5の局在性を観察したところ、すべて細胞膜上に局在することがわかった。 4)OsNramp5のネイティブプロモーターもしくは高発現用の35Sプロモーターの下流に各Nramp5の完全長ORFを組み込んだコンストラクトを作製し、バイナリーベクターに挿入後、アグロバクテリウム法によって「コシヒカリ環1号」に感染させ、組換えイネを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ダイズとコムギからNramp5遺伝子を単離することができた。また、Nramp5の細胞内局在性を観察することができた。相補性検定のために、組換えイネを作出することができた。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
各Nramp5の相補性検定のため、組換えイネを作出したので、今後はCd処理を行い、Cd吸収が回復しているかどうか、調べる。また、マンガンの吸収性についても調査する。酵母の変異株を用いたアッセイ試験を行うため、Cd感受性株やマンガン輸送欠損株に各Nramp5を形質転換し、変異株の増殖程度からCdやマンガン輸送機能を解析する。さらに単離したNramp5が輸送活性を持つ場合、ダイズやコムギの変異体ライブラリーから欠損株をtilling法で選抜し、栽培試験を通してCd吸収に対するNramp5の役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品(超低温フリーザー)や消耗品類が当初計画より安価に購入できたため。次年度は組換えイネ等の元素分析を行うため、その分の消耗品購入費として使用する他、超低温フリーザー用のラックの購入費に充てる。
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