2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of evaluating methods for soil nitrogen-fixing activity and its activation by bamboo power and microbial fertilizers
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17K07709
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 英明 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20208804)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非共生型窒素固定 / 竹粉砕資材 / 微生物資材 / 土壌細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素固定細菌は窒素ガスをアンモニアへと変換する窒素固定反応をニトロゲナーゼの触媒下で行うことができる。したがって、窒素固定細菌を微生物資材として利用できれば、環境に低負荷で植物への窒素供給が可能になることが期待される。しかしながら、窒素固定反応が進むには、炭素源が細菌へと持続的に供給されることや、アンモニアそして酸素への暴露から細菌が防護される必要がある。非共生窒素固定細菌は、窒素固定の際に宿主との親和性に依存しないため、微生物資材として人為的に利用する際に汎用性が高いという利点がある。このような利点を持つ非共生窒素固定細菌を有効に利用し、生物学的窒素固定の農業利用を高めるために、高C/N資材である竹粉施用による耕作地土壌への炭素源の人為的供給を検討した。 実験では、竹粉施用土壌そして化学肥料施用土壌の窒素固定活性の測定、また各土壌からの窒素固定細菌の単離を行った。附属農場圃場にて化学肥料施用区と竹粉施用区を設定し、収穫後の秋耕前に土壌試料の採取を行った。土壌の窒素固定活性の測定では、竹粉施用土壌、化学肥料施用土壌のそれぞれで、グルコース1%溶液を添加し一晩インキュベートすることで、ニトロゲナーゼ活性をアセチレン還元法により測定した。その結果、化学肥料施用土壌に比べて竹粉施用土壌で高いニトロゲナーゼ活性が認められた。これは竹粉により土壌C/Nが上昇し、土壌が窒素欠乏条件となった結果、ニトロゲナーゼが活性化したことが推察される。さらに好気性非共生窒素固定細菌の単離用寒天培地にて、竹粉施用土壌そして化学肥料施用土壌中の窒素固定細菌数を計数した。その結果、化学肥料施用土壌に比べ、竹粉施用土壌にて窒素固定細菌がより多く検出された。一方、形成されたコロニーの細菌の同定を16S rRNA遺伝子の塩基配列を基に調べたところ、竹粉施用土壌の方が検出される細菌の種類が少ない傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は土壌窒素固定活性の評価法の開発として以下2項目の解析手法の確立を計画した。一つ目の課題である土壌試料を用いたニトロゲナーゼ活性の測定については、土壌試料を一定比率の気相と一定量のアセチレンと共に封入し土壌自体が有する窒素固定のポテンシャルを定量化することができた。特に1%グルコース溶液を10g土壌試料に添加することで、GC-FIDの検出感度を大幅に上回る濃度のエチレンを検出することができた。二つ目の課題である土壌細菌叢と土壌中nif遺伝子の定量・多様性解析については、土壌試料中のDNAを抽出しPCRにより増幅したDNAフラグメントについて16S rRNAをコードする遺伝子と、ジニトロゲナーゼレダクターゼをコードするnifH遺伝子の定量ならびに多様性評価を試みた。nifH遺伝子については用いたプライマーでは差異が見られなかったが、これは土壌中で検出された窒素固定細菌属が有する遺伝子との塩基配列の違いが原因の一つと考えられる。今後はnifH増幅用のプライマー配列を改変することで対処する予定である。また、16S rRNAの遺伝子のPCR産物の塩基配列を基にした系統解析を行い、土壌中の細菌種の多様性についての考察を行った。 また、もう一つの大きな課題として非共生窒素固定細菌の単離と選抜を行った。採取された土壌から細胞懸濁液を調製し、それを無機態・有機態窒素を含まない培地に移植することで平板培養を行い非共生窒素固定細菌の単離を行った。炭素源としては、グルコースあるいはリンゴ酸ナトリウムといった細菌が資化しやすい炭素源を用いて行った。また、単離された細菌について、16S rRNAの遺伝子配列を決定して属の同定を行った。 このように当初計画した研究内容をほぼ行うことができ今後より詳細に検討すべき結果も得られているため、進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は土壌への竹粉砕資材(高C/N資材)添加の効果検証するためのバイオスティミュレーション試験を行う。密封可能な容器に土壌と水分を入れ、一定温度でのインキュベートを行う。竹粉や竹チップといった資材の添加の有無で窒素固定活性や菌叢、nif遺伝子の定量と系統解析において経時的変化が認められるか否かを調べる。ポジティブコントロールとしてグルコース溶液を添加した土壌においても同様の解析を行う予定である。また、大学圃場においても同様に竹粉を施用した試験区と化学肥料を施用した試験区を設定し年間を通じて定期的に土壌を採取する。竹材の有無と共に培養基材としての土壌に含まれる窒素含量がこれらの測定・解析項目にどのような影響を及ぼすかについても明らかにする。細菌群集構造や非共生型窒素固定細菌のポピュレーション変化、nif遺伝子の土壌中濃度、nif遺伝子の系統解析、そして土壌試料のニトロゲナーゼ活性を測定することによって、これら測定・解析項目間に相関性が見出されるかどうかを調べる。 また、もう一つの課題として土壌への微生物資材添加の効果検証するためのバイオオーギュメンテーション試験を行う。これまでの申請者らの研究成果から、好気性土壌細菌である枯草菌を窒素固定細菌と共培養することで、空気封入下の酸素による窒素固定の阻害が回避されることが明らかになっている。そこで、枯草菌等の土壌細菌を土壌試料に添加することで窒素固定活性の向上に結び付くような菌叢やnif遺伝子、ニトロゲナーゼ活性の変化が生じるかどうかを検証する。また、平成29年度の研究において土壌から窒素固定細菌を単離したため、それらの細菌についても土壌に添加し窒素固定に有利に働く変化が生じるかどうかを検証する。それと共に外部から移植した細菌の土壌定着率・増加率、あるいは減衰率・半減期についても調べる予定である。
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Research Products
(1 results)