2017 Fiscal Year Research-status Report
電極での触媒微生物の定着機構の解明とハイブリッド化によるバイオカソード性能の進化
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17K07713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 肇 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50549269)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気化学的メタン生成 / FISH / リアルタイムPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
電気化学的メタン生成反応の微生物的機構の解明を更に進めるため,バイオカソード表面の微生物系の詳細な理解を目的に, 定性的解析としてメタゲノム情報の解析と16S rRNA遺伝子アンプリコンのメタ・シークエンス解析,定量的解析として蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法とリアルタイムPCR法による解析を行った. メタゲノム情報の解析の結果,新規の細菌種(EMTCatB1)とメタン生成古細菌(メタン菌)Methanothermobacter thermautotrophicus 近縁種(EMTCatA1)に由来するゲノム情報が全メタゲノム情報のそれぞれ60%と30%を占めていた. FISHの結果から,バイオカソード及び培養液中に存在する微生物はほとんどが桿菌であり,そのうち比較的大きな桿菌がMethanobacteriales目の古細菌であることが明らかになった.また、各視野内に確認された全菌数に対するMethanobacteriales目古細菌の割合はメタゲノム解析におけるEMTCatA1の割合と近い値を示した. qPCRの結果からは定量された古細菌・細菌に対するMethanobacteriales目古細菌の割合がメタゲノム解析におけるEMTCatA1の割合と近く,また,Methanobacteriales目古細菌がバイオカソードの桿菌密度・メタン生成速度に影響を及ぼしている可能性が示唆された. 以上のことから,M. thermautotrophicus近縁種EMTCatA1は“桿菌”で,バイオカソードの内部抵抗、即ち電気化学メタン生成反応の触媒能に主として関与している可能性が非常に高いことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオカソードによる電気化学的メタン生成については未だ基礎研究の段階であり、実用化に向けて、バイオカソード性能の向上のための基礎的な理論と方法論の確立が求められる。これまで、バイオカソードの性能の重要な指標である内部抵抗やメタン生成速度と表面の微生物数の相関に基づいた反応の予備的な数理モデルの構築を行ってきた。しかし、同数理モデルの中で扱われた“微生物数”のパラメーターは、走査型電子顕微鏡によるバイオカソード表面の検鏡により、表面の微生物細胞の画像解析による定量で求められており、それら微生物の種類等は考慮されていない。そこで本研究では、メタゲノム解析、FISH法、リアルタイムPCR法を用い、バイオカソード上での優占種2種の定着を定性・定量的にし、それら優占種の存在量と内部抵抗やメタン生成速度との相関を評価することで、数理モデルを向上した。これは、今後の研究展開において重要な基盤であり、初年度の進捗としては順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオカソード菌叢の優占メタン菌種(Methanothermobacter thermautotrophicus近縁種)の定着が,内部抵抗の低減に重要であることが示唆された。同メタン菌の定着機構の詳細を理解する。 ・比増殖速度の評価:各定着段階のバイオカソードからRNAを抽出,前駆体rRNAと成熟rRNAの比率を指標とするRT-RiboSyn法で,各段階のカソードでの比増殖速度を決定する。 ・増殖やメタン生成に関わる遺伝子発現の定量:上記実験で抽出する総RNAを鋳型に,増殖やメタン生成に関わる遺伝子の発現変化をRT-qPCRで定量する。 ・線毛の機能解析:線毛タンパク質Mth60のホモログがドラフトゲノムで見つかっている。Mth60は固体表面への付着での機能が報告されている1。予備観察の結果,カソード上で発現が示唆された(未発表:同線毛はAlexa Fluor 488で染色される)。そこで,Mth60を大腸菌で発現し,抗体を作成する。同抗体を用いて,電極上での発現をin situで検証,また同抗体によるカソードへのメタン菌接着の阻害を検証し,カソードへの定着での役割を明らかにする。 ・カソード表面動態のリアルタイム解析(大学院生1名が担当):マイクロ電解セル(市販品FC-81を改造)を用いてバイオカソード形成を直接観察,微生物の着脱・増殖の速度論を評価する。
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