2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of cellulase induction and production mechanisms in a filamentous fungus.
Project/Area Number |
17K07718
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
野崎 功一 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10313834)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セルラーゼ誘導 / バイオマス分解 / セルラーゼ / Trichoderma reesei / β-グルコシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.T. reeseiのセルラーゼ生産メカニズムに着目し,セルラーゼ誘導物質であるソホロースの合成酵素(Cel1A)およびソホロース合成能力を増加させた変異型Cel1Aの過剰発現株の解析を引き続き実施した。カタボライト抑制株でこれらの酵素を発現させたところ,野生株同様にセルラーゼの生産量はCel1Aの発現量に強く影響を受けることを明らかにした。このことから,セルラーゼ生産量の頭打ちは,Cel1Aの過剰発現によるグルコースの蓄積が原因ではないことが明らかとなった。
2.1の結果を受けて,2018年度の主要目的であるソホロース分解酵素(Cel3B)遺伝子の欠損株を作製した。Cel3Bの欠損によって,セルラーゼの生産量が約2倍に増加することを明らかにした。セルラーゼ生産量の増加は,セルロースで誘導される全ての酵素についておこり,Cel3B遺伝子の欠損はセルラーゼ誘導・生産を促進させる効果があることが明らかとなった。また,Cel3Bプロモーターを使用して他の酵素を発現させることによって,セルラーゼの生産量が増加することも明らかにした。これは,Cel3Bプロモーターのコピー数が増加することで,Cel3B転写因子の競合が起こり,結果としてCel3Bの発現量が減少したためと予想された。本手法によって,追加酵素の発現とセルラーゼ生産量の増加が同時に可能となり,各種バイオマスの分解に適した酵素を生産するための菌株改良を行うことが可能となった。
3.セルラーゼ誘導に関与しているとされる糖質トランスポーター(Crt1)の過剰発現し,セルラーゼの生産量の促進を図った。Crt1過剰発現株は,野生株に比較してセルラーゼ生産量が増加した。しかし,菌のセロビオース取り込み量に顕著な差異は観察されなかった。このことから,Crt1は糖質の取り込みに積極的に関与しているわけではなく,セルラーゼ誘導のシグナル伝達経路に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を全て実施し,予想通りの結果を得た。これにより,予定通り最終年度の研究に取りかかることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2018年度に作製したCel3B遺伝子欠損株のセルラーゼ生産量が増加した原因について引き続き調査する。 2.糖質トランスポーターCrt1過剰発現株について,セルラーゼおよび転写因子の定量を実施し,セルラーゼ生産量が増加した理由を調査する。 3.ソホロース合成酵素Cel1Aの過剰発現,Cel3B遺伝子欠損およびCrt1過剰発現を組み合わせることで,さらなるセルラーゼ生産量の増加を試みる。 4.作製したセルラーゼ高生産変異株について,細胞内ソホロース蓄積量を定量し,セルラーゼ生産量との関連性を明らかにする。
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