2018 Fiscal Year Research-status Report
レドックスニュートラルな合成プロセスを志向した酸化還元酵素群の探索と機能解析
Project/Area Number |
17K07733
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
冨宿 賢一 明星大学, 理工学部, 准教授 (70392090)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体触媒 / 微生物変換 / 不斉反応 / ドミノ反応 / アルカロイド / 光学活性物質 / 酸化還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに確立した方法を用い4種のアミノアルコールを合成し、これを基質として酸化する微生物の探索に取り組んだ。微生物を液体培養し、その後、遠心分離による集菌と、マルチビーズショッカ―による微生物の破砕を行い、無細胞抽出液を調製した。合成したアミノアルコールを補酵素NAD(P)+と一緒に混合し酵素反応を行い、補酵素NAD(P)+がNAD(P)Hへと還元される際の吸光度の変化から酵素活性を求めた。 前年度から引き続き、酵母15菌株、細菌16菌株、未同定菌129菌株の計160菌株を用いて活性評価した中で、ほとんどの微生物は酵素活性を示さなかった。培地やpHの変更、酵素の濃縮を行いながら注意深く観察した中で、わずかではあるが有意な活性を示した6種類の微生物を選抜し、微生物変換を試みた。目的の物質変換を示す微生物の発見には至っていないが、基質のアミノアルコールや目的の環化成績体とも異なる物質の生成を確認することができたので、その構造解析に取り組んでいる。 また、前年度までに確立した方法を用い4種のアミンを合成し、これを基質として酸化する微生物の探索に取り組んだ。前述のように調製した無細胞抽出液を用い、合成したアミノアルコールや補酵素NAD(P)+と一緒に混合し酵素反応を行い、補酵素NAD(P)+がNAD(P)Hへと還元される際の吸光度の変化から酵素活性を求めた。 前述と同様に計160菌株を用いて活性評価した中で、ほとんどの微生物は酵素活性を示さなかったが、弱いながらも再現性良く酸化活性を示した4種類の微生物については、実際の微生物変換を試みた。試験管での前培養と続く振盪三角フラスコでの本培養後、遠心分離による集菌と洗浄を行った。菌体を緩衝液で懸濁し、合成したアミンを加え振盪した。TLC分析とNMRによる構造解析により微生物変換を評価したが、酸化生成物を確認することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
微生物の選抜において、2種類の反応いずれにおいても目的の酵素活性を示す微生物を絞り込むには至っていない。これは、本研究課題の予備的検討において酵素活性を確認することのできた細菌においても再現性に問題があり、また、新たに探索している微生物群においては、微生物変換において目的の生成物を確認することができていないためである。基質合成や標品合成、分析系については確立できていることから、今後、微生物探索の速度をより一層速め、酵素精製や遺伝子クローニングへと展開することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
分光光度計やHPLCなどの分析系をより一層整備し、従来以上に実験と分析の速度を速めて検体数を増やせるようにする。これにより、遅れている微生物選抜が迅速に進むことが期待できる。 選抜した微生物からは、これまでの予定通り、酵素の精製と酵素化学的な諸性質の解明に取り組む。最適な菌体培養条件と酵素精製方法を確立し、数十L単位で菌体を大量培養し、その菌体破砕液から酵素を精製する。精製した酵素を用い、酵素反応の至適pHや至適温度、pH安定性や温度安定性、基質特異性など酵素化学的な諸性質を精査する。 微生物選抜の遅れを考慮し、データベースからも酸化還元酵素の情報を精査する。候補となるものについては組換え大腸菌により酵素を大量生産し、物質変換を検討する必要があると考えている。
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