2017 Fiscal Year Research-status Report
「共生糸状菌」の二次代謝産物:ゲノムからの発掘と生物間相互作用における役割の解明
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17K07742
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本山 高幸 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70291094)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 応用微生物 / 菌類 / ゲノム / 抗生物質 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新しいタイプの二次代謝酵素TAS1のホモログを用いて、共生糸状菌からの化合物発掘を行った。TAS1は我々がイネいもち病菌(Pyricularia oryzae)から発見した新しいタイプの二次代謝酵素であり、一つの酵素でテヌアゾン酸を生合成する。TAS1はC-A-PCP-KSのユニークなドメイン構造を持ち、KSドメインがユニークな環化反応を行う。C-A-PCP-KSのドメイン構造を持つホモログは糸状菌に特異的である。TAS1ホモログを持つのはほとんどが共生菌(植物病原菌、昆虫と線虫の病原菌、キノコ)であり、共生への関与が期待される。TAS1ホモログはAからDの4グループに分類できる。まず、共生糸状菌のTAS1ホモログが生合成する化合物を明らかにし、二次代謝産物を発掘することを目指した研究を行なった。1つの酵素で生合成することが予想されるため、プロモーター交換で大量生産させ、化合物を精製し、構造決定することにした。グループAは全てテヌアゾン酸をつくることが予想されるため、グループA以外を対象にした。グループCからGloeophyllum trabeum(キノコ、植物病原菌)のホモログ、グループDからTolypocladium album(かび毒の生産菌)とFusarium oxysporum(植物病原菌)とBeauveria bassiana(昆虫病原菌)のホモログを使用して、全てでテヌアゾン酸ではない化合物の生産誘導に成功した。更に、テヌアゾン酸以外の化合物をつくるTAS1ホモログの生合成メカニズムの解析を行うため、タンパク質の異種発現を行った。T. albumとF. oxysporumのホモログをコムギ無細胞発現系を用いて可溶性で発現させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新しいタイプの二次代謝酵素TAS1のホモログを用いて、共生糸状菌からの化合物発掘を行うことを目的とした。グループCからG. trabeumのホモログ、グループDからT. albumとF. oxysporumとB. bassianaのホモログを使用して、プロモーター交換により大量発現させ、全てでテヌアゾン酸ではない化合物を生産誘導させることに成功した。また、テヌアゾン酸以外の化合物をつくるTAS1ホモログの生合成メカニズムの解析を行うため、T. albumとF. oxysporumのTAS1ホモログをコムギ無細胞発現系を用いて異種発現させ、可溶性のタンパク質を得ることに成功した。以上のように、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度の続きの研究を行うとともに、二次代謝活性化による共生糸状菌からの化合物発掘と活性化メカニズムの解析を行う。まず、テヌアゾン酸及びその類縁化合物以外の化合物を取得するために、イネいもち病菌を用いて二次代謝を活性化し、化合物を発掘する。既知の細胞内情報伝達系を撹乱し、二次代謝を活性化させる。理研天然化合物バンクNPDepoの化合物ライブラリーを用いて、未知の二次代謝制御系を撹乱し、二次代謝を活性化させる。生産誘導される二次代謝産物を同定するとともに、遺伝子発現解析等で生合成遺伝子を絞り込み、化合物の生合成遺伝子クラスターを明らかにする。次に、二次代謝活性化メカニズムを解析する。二次代謝活性化が既知の制御因子を介しているかどうかを明らかにする。生合成遺伝子クラスター特異的転写因子の遺伝子破壊やエピジェネティック制御化合物処理との比較等により解析する。二次代謝活性化化合物については、化合物ビーズカラムを作製し、標的のアフィニティー精製と同定を行い、新たな二次代謝制御タンパク質同定を目指す。標的候補の遺伝子破壊で化合物処理と同様の効果が現れるかどうかをみて、標的を確定させる。更に、二次代謝制御メカニズムの一般性を明らかにするため、イネいもち病菌で有効な二次代謝活性化法が、他の糸状菌でも有効かどうか解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が437,642円生じた。本年度、テヌアゾン酸ではない化合物の生産誘導に成功したが、一部の化合物が共通であったため、生産誘導された化合物の解析に充てる研究費が当初の予定より減少し、次年度使用額が生じた。次年度は、当初の予定より二次代謝活性化研究及び英文校閲等にかかる費用の増大が見込まれ、必要な研究費の総額が増加するため、次年度使用額437,642円を増加分にあてる。次年度に請求する研究費130万円とあわせて1,737,642円で次年度の研究を行う。145万円で物品購入を行い、研究を遂行する。旅費の10万円で研究成果の発表を行う。その他の約19万円で英文校閲等を行う。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Identification of a trichothecene production inhibitor by chemical array and library screening using trichodiene synthase as a target protein2017
Author(s)
Maeda K, Nakajima Y, Motoyama T, Kondoh Y, Kawamura T, Kanamaru K, Ohsato S, Nishiuchi T, Yoshida M, Osada H, Kobayashi T, Kimura M
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Journal Title
Pestic Biochem Physiol
Volume: 138
Pages: 1-7
DOI
Peer Reviewed
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