2018 Fiscal Year Research-status Report
「共生糸状菌」の二次代謝産物:ゲノムからの発掘と生物間相互作用における役割の解明
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17K07742
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本山 高幸 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70291094)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 応用微生物 / 菌類 / ゲノム / 抗生物質 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二次代謝活性化による共生糸状菌からの化合物発掘と活性化メカニズムの解析を行った。NPD938は我々が理研天然化合物バンクNPDepoの化合物ライブラリーから取得したテヌアゾン酸生産誘導化合物である。NPD938による二次代謝活性化が既知の制御因子を介しているかどうかを明らかにした。二次代謝のグローバルレギュレーターLAE1及びMAPキナーゼOSM1の遺伝子破壊株を用いた解析により、NPD938によるテヌアゾン酸生産誘導はこれらの因子がなくても引き起こされることが明らかになった。また、LAE1の遺伝子破壊株では、生産誘導が抑制されていたことから、LAE1を介する経路も存在することが示唆された。RNA-seqによる解析により、NPD938処理によりテヌアゾン酸の生合成遺伝子TAS1の発現誘導が確認できた。また、同時にメラニンの生合成に関与する遺伝子群の発現抑制が観察された。次に、二次代謝制御メカニズムの一般性を明らかにするため、イネいもち病菌で有効な二次代謝活性化法が、他の糸状菌でも有効かどうかを解析した。その結果、Tolypocladium album(かび毒の生産菌)でも、NPD938は二次代謝産物の生産誘導能を示した。生産誘導された化合物はピリドキサチン及びその類縁化合物であることが明らかになった。RNA-seqによる解析により、NPD938処理により発現誘導される遺伝子クラスターを見出した。この遺伝子クラスターの中の生合成の鍵遺伝子(PKS-NRPS遺伝子)の破壊株ではこれらの化合物の生産が消失したことから、この遺伝子クラスターが生合成に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、二次代謝活性化による共生糸状菌からの化合物発掘と活性化メカニズムの解析を行うことを目的とした。理研天然化合物バンクNPDepoから取得した二次代謝活性化化合物NPD938のイネいもち病菌における作用に関与する因子(LAE1)を同定することに成功した。また、NPD938が転写レベルでテヌアゾン酸とメラニンの生産を制御することを明らかにした。更に、NPD938がかび毒生産菌であるT. albumでも二次代謝を活性化する活性を示すことから、二次代謝制御メカニズムの共通性を示すことができ、生産誘導されるピリドキサチン類の生合成遺伝子クラスターの同定に成功した。以上のように、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度の続きの研究を行うとともに、共生糸状菌の宿主を用いた二次代謝産物の役割の解析を行う。まず、グループAとDのTAS1ホモログに関して、宿主を用いた活性評価を行う。発掘した化合物あるいは遺伝子破壊株等を用いて、感染における役割を明らかにする。グループAのホモログを持つ糸状菌として、イネいもち病菌とCordyceps militaris(冬虫夏草菌)を用いる。グループDを持つ糸状菌として、F. oxysporum等を用いる。次に、イネいもち病菌を用いてテヌアゾン酸以外の二次代謝産物の活性評価を行う。イネいもち病菌のゲノム中に存在する約30の推定生合成遺伝子クラスターの中から選択したクラスターに関して、イネとの相互作用における役割を解析する。二次代謝産物の基本骨格を生合成する鍵酵素の遺伝子破壊株を作製し、イネへの病原性を解析し、生物間相互作用への関与を明らかにする。化合物発掘に成功した場合は、化合物を用いて感染への関与を解析する。更に、発掘した化合物を用いて宿主生物以外の生物に対する生育阻害活性を解析する。非宿主生物として、バクテリア、酵母、糸状菌、動物細胞等を用いる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が594,097円生じた。本年度、化合物による二次代謝産物の生産誘導に成功したが、生産誘導されてきた化合物が既知物質であったため、生産誘導された化合物の解析に充てる研究費が当初の予定より減少し、次年度使用額が生じた。 使用計画 次年度は、当初の予定より二次代謝の役割に関する研究及び英文校閲等にかかる費用の増大が見込まれ、必要な研究費の総額が増加するため、次年度使用額594,097円を増加分にあてる。次年度に請求する研究費120万円とあわせて1,794,097円で次年度の研究を行う。130万円で物品購入を行い、研究を遂行する。旅費の30万円で研究成果の発表を行う。その他の20万円で英文校閲等を行う。
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Research Products
(13 results)