2019 Fiscal Year Research-status Report
「共生糸状菌」の二次代謝産物:ゲノムからの発掘と生物間相互作用における役割の解明
Project/Area Number |
17K07742
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本山 高幸 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70291094)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 応用微生物 / 菌類 / ゲノム / 抗生物質 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、共生糸状菌の宿主を用いた二次代謝産物の役割の解析を行うとともに、共生糸状菌を用いた化合物発掘を継続し、発掘した化合物を用いて化合物の生物間相互作用における役割を解析した。イネいもち病菌を用いて二成分情報伝達系の撹乱を行なうことにより、ポリケタイド化合物であるネクトリアピロン類の生産誘導を引き起こし、生合成遺伝子クラスターを同定していた。生合成遺伝子を大量発現させることによりネクトリアピロン類の大量生産を可能にし、新規の類縁化合物を同定した。また、生合成遺伝子の大量発現株が放線菌Streptomyces griseusとの競合において有利になることを見出し、ネクトリアピロン類が微生物間相互作用に関与することが示唆された。グループDのTAS1ホモログの大量発現株でテヌアゾン酸ではない化合物の大量生産が引き起こされることを見出していた。化合物を精製し、構造決定したところ、Tolypocladium albumが新規化合物1、Fusarium oxysporumが新規化合物1と2を生産していることが明らかになった。1と2の構造から、ベータラクトン構造の前駆体の存在が予想されたため、T. albumのTAS1ホモログ大量発現株を短時間培養したところ、新規化合物3を生産していることが明らかになった。更に、2の前駆体と予想される4を有機合成した。1-4の生物活性を解析したところ、3に動物細胞とマラリア原虫に対する生育阻害活性が認められた。1-4の構造は放線菌が生産するプロテアソーム阻害剤ラクタシスチンと類似の構造であったため、プロテアソーム阻害活性を測定したところ、3に強力な活性、4に中程度の活性が認められた。以上の結果から、グループDのTAS1ホモログはプロテアソーム阻害活性を示す新規化合物の生産に関与し、生物間相互作用に何らかの関与をしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、共生糸状菌から発掘した化合物の役割を宿主を用いて明らかにするとともに、共生糸状菌を用いた化合物発掘を継続し、発掘した化合物を用いて化合物の生物間相互作用における役割を明らかにすることを目的とした。イネいもち病菌を用いてネクトリアピロン類の大量生産株を作製し、本株が放線菌との強豪において有利になることを見出した。また、グループD TAS1ホモログが4種類の新規化合物の生産に関与することを見出した。更に、これらの一部がプロテアソーム阻害活性を示し、生物間相互作用に何らかの関与をしていることが示唆された。以上のように、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はグループC TAS1ホモログが生産する化合物の単離・構造解析と生理活性の解析および生合成メカニズムに関する解析を主に行い、関連した成果に関して学会及び論文での発表を行う。まず、Gloeophyllum trabeum(キノコ、植物病原菌)のグループC TAS1ホモログの大量発現株を大量培養して、化合物を精製し、構造解析を行なう。次に、発掘した化合物を用いて宿主生物以外の生物に対する生育阻害活性を解析する。非宿主生物として、バクテリア、酵母、糸状菌、動物細胞等を用いる。また、化合物が新規化合物だった場合、生合成メカニズムの解析を行なう。具体的には、どのドメインが構造の違いに重要かについて解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が967,183円生じた。新しいタイプの二次代謝酵素TAS1のホモログを用いた共生糸状菌からの化合物発掘において、グループCホモログが生産する化合物の構造決定を行う予定であったが、精製が難しい化合物であることが明らかになったため計画を変更し、遺伝子の発現系や培養の方法を変えて精製をやり直すことにした。このような計画変更に伴い、化合物精製や構造決定および生理作用解析等に関する研究費が減少し未使用額が生じた。次年度は、計画変更に伴いグループC TAS1ホモログが生産する化合物の単離・構造解析と生理活性の解析および生合成メカニズムに関する解析及びそれに関する学会及び論文での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。67万円で物品購入を行い、研究を遂行する。旅費の10万円で研究成果の発表を行う。その他の20万円で英文校閲等を行う。
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Research Products
(11 results)