2017 Fiscal Year Research-status Report
オキシトシン受容体の脳神経科学的エビデンスに基づく新規アゴニストの探索
Project/Area Number |
17K07745
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日出間 志寿 東北大学, 農学研究科, 助教 (30241558)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長 由扶子 東北大学, 農学研究科, 助教 (60323086)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | オキシトシン / オキシトシン受容体 / TGFα shedding assay / 自閉症スペクトラム / アデノ随伴ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの研究においてオキシトシンーオキシトシン受容体(OXT-OXTR)は向社会行動に深くかかわり、自閉症スペクトラム、不安障害、うつ病、健忘症、肥満症、糖尿病等の予防、改善などの効果が報告されている。特に精神疾患をかかえる患者の数は近年大幅に増加しておりOXT-OXTRが精神・神経疾患の発症のメカニズムあるいは治療,予防にどのように関わるかを明らかにすることが極めて重要である。本研究では、まず、第一に食品や植物など天然化合物または化合物ライブラリーからOXTR を活性化するOXTを超える安全なOXTアゴニストをスクリーニング、同定することを着想し、OXTRアゴニストスクリーニングアッセイを構築した。東北大学所有の化合物ライブラリー6000種、東京大学所有の化合物ライブラリー2000種、キリン株式会社から果汁抽出物30種、岩手大学農学部・木村賢一教授所有の天然物ライブラリー770種についての1次スクリーニングをおこなった。次に自閉症モデルマウスに対するOXT-OXTRの作用機序を明らかにし、得られた新規アゴニストの作用をin vivoで評価する系を作成することを目指した。さらに神経活動依存遺伝子Arcのエンハンサー領域と最小プロモーター領域を融合させた人工プロモーターと蛍光タンパク質Tdtomatoを組み込んだウイルスベクター(pAAV-eSARE-Tdtomato)を構築しOXTR発現を可視化できる遺伝子改変マウス(OXTR-Venus)に感染させ社会行動の刺激を与えた際にどのOXTR神経回路が活性化するかを脳の3Dマッピングにより明らかにすることをめざした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OXTアゴニストスクリーニングの結果、東北大学所有の化合物ライブラリー6000種、キリン株式会社ら果汁抽出物30種、岩手大学農学部・木村賢一教授所有の天然物ライブラリー770種、東京大学所有の化合物ライブラリー5040種を1次スクリーニングした結果、化合物ライブラリーから29種の候補化合物を得た。今後これらについて再現性をとるとともに特異性、濃度依存性を解析する。 自閉症モデルマウスは妊娠14.5日の母親マウスにバルプロ酸を腹腔内投与し、生まれたマウスをモデルマウスとした。新生児の鳴き声(Ultrasonic vocalization:USV)測定, 向社会行動を反映する3chamber試験を行い作成したマウスが自閉症様行動を示すことを明らかにした。このマウスの脳内のOXTR発現細胞のみに人工受容体DREADDを発現させた。薬剤CNOを腹腔内投与することでOXTR発現細胞を活性化しその自閉症様行動を改善することを明らかにした。改善効果は扁桃体、外側中隔のOXTRが重要であることも明らかにした。pAAV-eSARE-Tdtomatoベクターを構築し、ウイルス化し、OXTR発現を可視化できる遺伝子改変マウス(OXTR-Venus)に感染させ社会行動の刺激を与えた際にどのOXTR神経回路が活性化するかを脳の3Dマッピングにより明らかにすることをめざした。現在、共同研究者のペンシルバニア州立大学Yongsoo Kim博士にサンプルを送り 3Dマッピング解析を依頼中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
候補化合物の2次スクリーニングを行いさらに候補化合物を絞り込む。目的のアゴニストが得られた場合、自閉症モデルマウスに投与しその社会行動の改善が見られるかを解析する。目的アゴニストが得られない場合はさらに化合物ライブラリーを依頼し1次スクリーニングからおこなっていく。扁桃体と外側中隔のOXTRが自閉症様行動を改善することが明らかになりその神経細胞の機能と神経回路を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
化合物ライブラリー購入料金、アッセイの作業効率が上がったためアッセイにかかる消耗品の増加が予想される。次年度はアッセイ数を増やし候補化合物のスクリーニングを拡大する。 動物実験が増加し施設使用料、餌、床敷き代の増額が予想される。次年度は行動解析、神経回路解析をさらに進める。
|
Research Products
(11 results)