2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム情報を駆使した甘草トリテルペノイド生合成制御の包括的理解
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17K07754
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関 光 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30392004)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トリテルペン / 生合成制御 / 転写制御因子 / カンゾウ / 代謝工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬用植物カンゾウにおいて各種トリテルペノイド(グリチルリチン、ソヤサポニン、オレアノール酸、ベツリン酸)の生合成に関わるオキシドスクアレン環化酵素(β-アミリン合成酵素、ルペオール合成酵素)およびシトクロムP450酸化酵素(CYP88D6、CYP72A154、CYP93E3、CYP72A566、CYP716A179)遺伝子のプロモーター領域の単離とGUSレポーターコンストラクトの作成を行った。同時に、カンゾウのトランスクリプトームデータから、トリテルペノイド生合成制御に関与する転写因子の候補として7種のbHLH型転写因子を選抜し、遺伝子クローニングならびにエフェクターコンストラクトの作成を行った。これらのbHLHsの各酵素遺伝子プロモーターに対する転写活性化能をタバコBY2プロトプラストを用いたトランジェントアッセイ法により解析した結果、1種のbHLH転写因子が、ソヤサポニン生合成に関わる3種の酵素(β-アミリン合成酵素、CYP93E3、CYP72A566)遺伝子プロモーターからの転写を顕著に活性化することが判明した。さらに、CYP93E3遺伝子プロモーター中のbHLH結合モチーフに変異を導入することにより転写活性化が起こらないことから、これらのプロモーターへのダイレクトな結合を介して転写を活性化しているものと推察された。さらに、本転写因子を高発現するカンゾウの形質転換毛状根を作出したところ、コントロールの毛状根よりもソヤサポニン生合成に関わる3種の酵素遺伝子の発現が有意に増高していると同時にソヤサポニン生合成中間体をより多く蓄積していることが判明した。以上の結果から、本転写因子がカンゾウにおいてソヤサポニン生合成を正に制御する因子であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カンゾウのゲノム情報を活用して既知のトリテルペノイド生合成に関わる酵素遺伝子のプロモーターを全て単離できたとともに、これまでに蓄積したトランスクリプトームデータを活用してソヤサポニン生合成に関わるβ-アミリン合成酵素、CYP93E3、CYP72A566遺伝子プロモーターからの転写を顕著に活性化するbHLH型転写因子の同定に成功し、Plant Cell Physiology誌にて誌上発表を行った。さらに、本転写因子の機能をさらに詳細に解析するため、本転写因子を高発現する形質転換ミヤコグサ毛状根を作出したところ、ミヤコグサにおいてもソヤサポニン生合成に関わる複数の酵素遺伝子の発現を活性化することが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のbHLH転写因子を高発現するカンゾウ毛状根とコントロール毛状根との比較トランスクリプトーム解析を行うことにより、未知のターゲット遺伝子を探索するとともに、クロマチン免疫沈降法によるターゲットプロモーターのゲノムワイドな解析に着手する。また、ミヤコグサ、ダイズにおける推定オルソログの探索と機能解析、ならびに、推定オルソログを高発現する、あるいはノックアウトした植物の表現型解析、トランスクリプトームおよびメタボローム解析を行うことにより、マメ科植物におけるトリテルペノイド生合成制御機構の共通性や他の代謝産物パスウェイとの制御クロストークについての知見を得る。また、これらと並行して、カンゾウにおけるグリチルリチン生合成酵素遺伝子の活性化因子の探索を進めるべく、カンゾウ培養組織においてグリチルリチン生合成を特異的に活性化する各種ストレス処理などの条件をCYP88D6およびCYP72A154遺伝子の発現を指標に探索しトランスクリプトーム解析を行うことで候補転写因子の絞り込みを行う。
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Causes of Carryover |
H29年度内に予想よりも早くソヤサポニン生合成を活性化する転写因子を同定することに成功した。さらに、当初予定していた本転写因子を高発現するカンゾウ形質転換毛状根の作出に加え、別のマメ科植物であるミヤコグサの形質転換毛状根の作出も行った結果、本転写因子がミヤコグサにおいてもソヤサポニン生合成酵素遺伝子の発現を活性化しうることが判明した。このことから、当初予定していたカンゾウ形質転換毛状根のRNA-seq解析に加え、ミヤコグサの形質転換毛状根についてもRNA-seq解析を行うことで本転写因子によるサポニン生合成活性化機構をより詳細かつ精度よく解析することが可能であると考えられる。そこで、当初H29年度に予定していた冷却遠心機の購入をとりやめ、H30年度以降に行うRNA-seq解析に係る経費の増額分に充当することとしたい。
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Research Products
(3 results)